[研究成果] 1種と思われていた「フナムシ」を調べると3種だった!

研究のポイント

  • 日本で報告されているフナムシ類の仲間のうち、もっともよく知られている「フナムシ」(学名Ligia exotica)は、日本沿岸では少なくとも3つの種に分かれることを明らかにしました。
  • この3種のうち、大阪府岬町産と神奈川県江の島産はそれぞれ新種であり、岬町産をアオホシフナムシ(Ligia laticarpa)、江の島産をフタマタフナムシ(Ligia furcata)と命名しました。
  • この研究により、私たちが海岸でよく目にする「フナムシ」という生き物をより正確に仲間分けすることが可能になりました。この成果は、日本やアジア、そして世界のフナムシ類の分布や生態をより詳しく把握することにもつながります。

研究内容

 海辺に行くとたくさんいるフナムシ類は、私たちにとってなじみ深い生き物です。フナムシ属として分類されるこれらの種は、日本の沿岸からは今までに10種が報告されています。このうち、本州・四国・九州に広く生息し、もっともよく知られているのは「フナムシ」(学名Ligia exotica)という種です。当館の有山啓之外来研究員と国立環境研究所の日置恭史郎主任研究員は、日本にいる「フナムシ」が本当に1種なのかどうか疑問を持ち、兵庫県西宮市産、大阪府岬町産、神奈川県江の島産のフナムシについて、形態と遺伝子情報を調べました。その結果、これらは3つの種に分けられることがわかりました。岬町産と江の島産はそれぞれ新種とみなすのが妥当という結論になり、岬町産はアオホシフナムシ(Ligia laticarpa)、江の島産はフタマタフナムシ(Ligia furcata)として新種記載されました。西宮市産は島根県の宍道湖から2008年に記載されていたシンジコフナムシ(Ligia shinjiensis)、及び世界各地に分布するフナムシ(Ligia exotica)と遺伝的な違いはなく、同種とみなされました。今回発表した論文では、Ligia exoticaに対してトライフナムシという和名を新たに提唱しました。これら3種はお互いに形態がよく似ていますが、口の一部の大顎(おおあご)や、歩行に使う胸肢(きょうし)、腹部に形成される腹肢(ふくし)に違いが見られます。アオホシフナムシのオスの背中には青い斑点を持つという特徴があり、中国や韓国にも分布していることがわかりました。

 本研究は、2024年5月22日発行の国際学術誌Zootaxa(ズータクサ)に掲載されました。

論文情報

  • タイトル:A morphological and molecular study of Ligia exotica Roux, 1828 (Crustacea: Isopoda: Ligiidae) from Japan, with descriptions of two new species
  • 雑誌名:Zootaxa
  • 著者:有山啓之(ありやま ひろゆき・大阪市立自然史博物館外来研究員)・日置恭史郎(ひき きょうしろう・国立環境研究所)
  • URL:https://doi.org/10.11646/zootaxa.5453.4.1

研究に関連する図版

図1:今回の研究で調べた日本産フナムシの3種(オス)。左よりトライフナムシ(兵庫県西宮市産)、アオホシフナムシ(大阪府岬町産)、フタマタフナムシ(神奈川県江の島産)。黒のバーは1 cm。
図2:従来知られていた日本産フナムシ属各種と、今回の研究による種名変更の対応関係。
図3:遺伝子情報(16S rRNA遺伝子)に基づいたフナムシ類の系統樹。今回の研究で用いた試料は青字で示している。

このリリースに関するお問い合わせ

大阪市立自然史博物館 総務課 広報担当

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