ミニ展示「植物の標本を使って研究する」 令和7年1月は収蔵庫から「発掘」された大阪府新産のトラノオジソの標本に関する論文を紹介します

 大阪市立自然史博物館では、所蔵する植物標本を使った研究を月替わりで紹介するミニ展示を開催中です。本展示は、令和6年6月1日(土)から令和7年6月1日(日)まで、本館1階ナウマンホールにてご覧いただけます。第8回となる令和7年1月の展示では、梅原ほか(2024)による、収蔵庫から「発掘」された大阪府新産のトラノオジソの標本に関する研究を紹介します。
 トラノオジソは関東以南の太平洋側に分布するシソ科シソ属の比較的珍しい植物です。この論文の著者である梅原さんたちは、当館の収蔵庫に配架されているフトボナギナタコウジュと同定されていた大阪府産の標本が、実はトラノオジソであることに気づきました。これまで大阪府からはトラノオジソは知られておらず、この発見によって収蔵庫の中から大阪府新産のトラノオジソが「発掘」されました。同じ時期に野外調査でもトラノオジソが見つかっており、一連の調査によって、大阪府でトラノオジソの記録がある場所は3 か所になりました。
 標本の同定が再検討されるのは、標本を使った研究の基礎です。今回のように再同定によって新たな発見に繋がることもあります。標本の再検討を通じた正確な分布記録は、植物の保全にも役立ちます。今回「発掘」されたトラノオジソの標本は、標本を公的な標本室で保管しておき、様々な研究者によって検討されることの重要性を改めて教えてくれるものです。
 今回展示する標本2点は当館の友の会会誌「Nature Study」2024年9月号に写真が掲載された標本です。特に友の会会員の方には、1月26日(日)の友の会総会など、来館時にご覧いただけると幸いです。

1月に紹介する研究: 梅原徹・山住一郎・澤田徹 2024. 収蔵庫から発掘した大阪府新産のトラノオジソ.Nature Study 70(9):5-6.

ミニ展示の概要については過去のWhat‘s new『ミニ展示「植物の標本を使って研究する」を開催します』(https://omnh.jp/archives/11362)をご覧ください。

※なるべく月替わりで展示を入れ替えますが、担当者の都合で入れ替えが数日前後することがあります。ご了承ください。

令和7年1月に紹介する収蔵庫から「発掘」された大阪府新産のトラノオジソの展示の様子。フトボナギナタコウジュからトラノオジソに再同定された標本2点に加え、その詳細を報告した当館友の会会誌「Nature Study」の記事や日本産シソ科シソ属の分類学的研究の論文を展示しています。

本展示に関する問合せ:植物研究室・横川