生物学研究者が撮影した動画を博物館で収蔵する際に起こりうる課題についての論文を出版
大阪市立自然史博物館では、自然史に関係する動画資料の収集と収蔵を行っています。このような資料を収蔵する際に起こりうる課題を明らかにするため、当館の石田惣学芸員を筆頭とする研究グループは、動画資料を提供する側の生物学研究者に対し、アンケート調査を行いました。その結果、以下のような点が見いだされました。
・動画資料を収蔵する目的の一つは教育での利用促進ですが、自身の研究データが教育利用される意義については研究者の皆さんの多くが認めており、また研究者の皆さん自身が講義などでも利用したいというニーズがあります。
・一方、収蔵資料はウェブで公開されたり、教育以外の目的でも利用される可能性がありますが、このような利用には研究者の皆さんに抵抗感があり、利用の拡大にはオープンサイエンスの普及を待つ必要があると考えられます。
・収蔵、公開時の課題として、デジタル化により増大する動画量への対応、VHSなどのレガシー媒体への対応、動画利用時の編集を認めるかどうか、ウェブ公開可否の判断基準をどう設定するか、などが見いだされました。
今回の研究で明らかになった課題を踏まえながら、動画資料の収集・収蔵体制を構築していく予定です。本研究成果は、2019年6月24日に「デジタルアーカイブ学会誌」に掲載され、2019年8月30日にJ-StageでPDFが公開されました。
なお、本研究は日本学術振興会の科研費(JP15H02955)の助成を受けて行われました。
掲載論文:
タイトル:生物学動画アーカイブの運用で想定される課題:研究者アンケートからの考察
著者:石田 惣*, 中田 兼介, 西 浩孝, 藪田 慎司(*は当館学芸員)
掲載誌名:デジタルアーカイブ学会誌, 3: 334-344.
https://doi.org/10.24506/jsda.3.3_334