日記風覚え書き

2016年7月8月、9月

(2005年1-3月4-6月7-9月10-12月、2006年1-3月4-6月7-9月10-12月
 2007年1-3月4-6月7-9月10-12月、2008年1-3月4-6月7-9月10-12月
 2009年1-3月4-6月7-9月10-12月、2010年1-3月4-6月7-9月10-12月
 2011年1-3月4-6月7-9月10-12月、2012年1-3月4-6月7-9月10-12月
 2013年1-3月4-6月7-9月10-12月、2014年1-3月4-6月7-9月10-12月
 2015年1-3月4-6月7-9月10-12月、2016年1-3月4-6月、7-9月、10-12月)


和田の鳥小屋のTOPに戻る

●2016年9月30日 2016年9月のまとめ 冷凍室が壊れた

遠い昔に思えるが、9月は大分県での干潟調査から始まった。が、そんなことは、冷凍室が壊れた関連で全部ふっとんだ。冷凍室が落ち着いたと思ったら、そこからは行事ウィーク。友の会別府干潟合宿から、富田林やら植物園での行事の下見と本番。その合間になんと、プライベートの引越(といっても同じ建物の中でだけど)。9月は引越と大分で終わった印象。

冷凍室の調子がおかしい、壊れたかも。という連絡を受けたのが4日夕方。きっと勘違いに違いないと思いつつ、5日に見てみると確かに壊れている。さっそく修理の手配。すぐになおるかと思ったら、部品を作るのに1ヶ月ほどかかるという話。仕方が無いので、冷凍車の手配。関係者の動きは素早く、9日から冷凍車がくることになり、8日午後には納車され稼働始めた。8日夜から9日で冷凍室の中身一通りの引越作業。残ったのは、誰かの判断待ちのや、この機会に処理しようってもの。それをホネホネ団の活動をからめて処理を進め、15日には冷凍室は空になった。9月の1/3が冷凍室がらみの作業で明け暮れたことになる。
冷凍室が壊れたといっても、冷凍が必要なものの到着は、止まらない。カピバラ3箱、キノコ5箱、トウゾクカモメ、キジ、クロハラアジサシ。いつも以上に物が届いている気がする。28日、ふと冷凍車を開けてみて、驚いた。もう入口まで箱が詰め込まれていて、すき間すらほとんどない。こりゃ大変だ! と思ったけど、29日夕方に冷凍室がなおって、一安心。
そんな慌ただしい1ヶ月を振り返ってみよう。

ルーティンのため池調査、大和川調査は無事完了。カラスの枝落とし調査は微妙に継続中。そろそろ鳥のセンサスと木の実チェックをスタートさせないといけないが、10月スタートにずれ込み中。
瀬戸内海展に向けての調査は、大分県北部の調査を終えて、下旬には山口県の島に調査に行く予定だったが、後半は中止となった。

普及行事は、ジュニア自然史クラブと植物園案内、富田林市での地域自然誌シリーズ。少なめだった。
11月の大阪自然史フェスティバルに向けて、イベント系の中身をかためて、プレス発表完了。アルバイト募集も開始。そして2月のホネホネサミットの出展者募集をスタートさせた。

皮剥きは、冷凍室を開けるために、カラスの大群と、大きめの哺乳類と霊長類をかなりたくさん処理した。でも冷凍室からは、すっかり忘れていた大物がいっぱい出てきたので、また大物から処理していった方がよさそう。

とまあ忙しい中、
読んだ本は、自然史関係4冊とSF1冊、ライトノベル1冊。
原稿は書いてないし、講演も0本。頼まれている査読1本は10月にずれ込んだ。
健康面では、わりと順調なのだけど、健康診断の結果が出てしまった。★が4つ。糖質を減らそうと決意。


●2016年9月29日 お片付けモード

冷凍室が壊れ、その中身を移動させるついでに、けっこう片付ける。その勢いで、片付けモードのスイッチが入ってしまった。でも、研究室の机周りを片付けるのはさておき、自宅の部屋を片付け始める。牛乳パックを片付け、冷蔵庫の冷凍庫を片付ける。ついでに使っていない家電を解約し、ケーブルテレビも解約した。なんかすっきり。


●2016年9月27日 ナイト島?

今年はナイトハイクの新しいコースを探して、あちこち行った。最後はナイトハイクならぬナイト島。下見の下見には行けなかったけど。

大阪湾と紀伊水道の境にある友ヶ島。近年なぜかコスプレイヤーや廃墟マニア?などに、ラピュタの島とかいって人気が出て、来島者が増加。昼間に行くのが難しくなっている。
かつては、よく観察会で出かけていたのに。タイワンリスやタイワンジカなどを間近に観察でき、砲台跡でコウモリ探したり、ツチガエル捕まえたり。一番上では、タカの渡りも観察できる。一周したらちょうど頃合いの楽しい島なのだけど。
行き来する船は小さく、すぐにいっぱいになる。島に渡ってしまえば、増便してでも連れ帰ってくれるが、行きはあふれると連れて行ってくれない。週末は早くから並ばないと乗れなかったりする。予約できればいいのだけど、それは無理らしい。大勢で行くと分かっていれば、増発もするで、と現場の人は言ってくれたりもするけど、お願いしようと電話をしたら断られる。
要するに、団体で行きにくい島になってしまったのである。

昼間に行けないなら、夜はどうだろう? 最終便で渡って、朝一番の便で帰ってくる。暖かい季節なら、シートでもあれば、寝られるだろう。夜の島は楽しいに違いない。と盛り上がった結果、一度行ってみることになった。
下見の結果を聞くに、午後4時の最終便で行って、朝は午前9時半の便で帰ってくる。島での滞在時間17時間は、とても長いとのこと。夕方や早朝はリスやシカがよく見られるというが、それ以外にすることがないと。真っ暗な島を歩くといっても限度があるしねぇ。
もう一つ問題は、シカが多い島だけにダニがいるということ。うかつな場所で寝たら、ダニにつかれる恐れあり。その対策も必要。
とまあいろいろ問題ありそうだけど、なんか惹かれるのも確か。とにかく、来年辺り下見に行ってみよっと。


●2016年9月26日 秋の観察会に必要な人材

昨日、富田林方面の河川から低い山手にかけての観察会があったのだけど、この秋雨のおかげで、キノコだらけ。秋の観察会にはキノコ担当が必要だなぁ、と改めて思った。とにかく種類が多いので、キノコ屋がなかなか動かない。これが予想できたなら、おもにキノコの観察会だとアナウンスしたのだけど、乾燥してなんにも無いときもあるから難しい。
おなじく虫では、とくに河川敷ではバッタが大豊作。子どもの食いつきもいいし、バッタ担当も是非とも欲しい。
雨の後で湿った石垣にはカタツムリがウロウロ。
そしてハリガネムシ。駅前ではカマキリから出たての生きたハリガネムシが見つかり。歩く道沿いではハラビロカマキリがひかれまくり。河川敷の水たまりにはカマキリから脱出したとおぼしき生きたハリガネムシが何匹も泳ぎ。山道の手すりではオオカマキリやコカマキリが待っている。ハリガネムシとカマキリの関係が語れる人材も必要。

かくいう私はといえば、橋の下のイワツバメの壊れた古巣を説明し、河川敷でヌマガエル!と叫び、田んぼでカヤネズミの巣を見せるだけの簡単なお仕事。ぜんぜん必要な人材ではなかった。


●2016年9月24日 空振りのタカの渡り観察会

タカの渡りって、そもそも日による増減があるし、天候の影響も少なくないし、よほどのメッカでない限りハズレの日ってのがあるのは仕方が無い。だもんで、博物館の観察会で設定するといった真似はしないのだけど、サークルなら犠牲者も少ない(?)かなぁ、と見に行ったりする。今日も鳥のサークルでタカの渡りを見に行ったのだけど、見事にハズレた。
天気予報はまずまずの天気、間違っても雨は降らないはずだった。大阪を出た時は曇ってはいたけど、けっこう晴れ間もあった。が、南へ向かうにつけ雲は多くなり、日御碕にほど近い目的地に着いた時には、かなりの曇天。それどころか南の空は真っ暗で、雷の音が聞こえてくる。あまりタカは期待できそうにない。が、少しくらいは飛ぶだろう。
と、思って待っていたら、ツバメやアマツバメは飛んできた。異様に低い場所を飛んでる。これは雨ってことかな? と思ったら、1時間ほどして雨が降り出した。天気予報を見ると、紀伊半島に雨域がかかってきていて、昨日までの予報よりも雨域が北にあがってきてるらしい。でもまあ、現在地はギリギリ雨域にかかっているだけ。予報ではもうすぐ止むような。が、さっぱり雨は止まない。予報も止むと言わなくなった。予報をどんどん変えやがって! と思うも、雨はどうにもならない。
やむなく、タカの渡りの観察会は、タカを見ずに早々に終了。結局、現地にいたのは1時間半だけ。午前4時に起きて、午前6時に大阪で車に拾ってもらって、到着したのが午前7時40分。1時間半だけ滞在して、再び1時間40分ほどのドライブで大阪へ送って頂いた。午前中に家にたどりついた。早起きして眠かったので、夕方まで昼寝。ドライブと昼寝の一日であった。


●2016年9月22日 江戸時代のツルは、松の木にとまってたかも

今日は、植物園で鳥の観察会。あまり鳥が出ないので、木にとまってるカワウやアオサギでも、何かしら語らなければならない。こうした水鳥で木にとまる話といえば、ツルは木にとまらないという話。
脚が長い水鳥でも、コウノトリ類やサギ類は木にとまるが、ツルは木にとまらない。ってことになっている。その理由は、ツルは第1足指がほぼなくて、枝がつかめないから。確かにサギ類は第1足指が長くて枝をつかんで、木にとまってるし、電線にもとまれる。ちなみにカワウも第1足指をつかって枝をつかみ、木にとまってる。でも、コウノトリには第1足指はあるにはあるけど、短いので枝はつかめない。コウノトリが木にとまってる時は、枝をつかまずに枝に乗ってるだけ。それで言えば、カモだって、枝に乗るかたちで木にとまる。そうやって木にとまれるなら、ツルだってとまれるはず。ツルが木にとまらないのは、枝がつかめないからではなく、とまる習性がないだけでは?
ドバトなんか昔は木にとまらなかった。1980年代には、ドバトが木の枝にとまってました!ってわざわざ報告されていたりする。それが、今は普通に木にとまってる。木にとまるかどうかという習性は、時代とともに変化するってことになる。だとすると、ツルもかつては木にとまっていたとしても、おかしくない。
江戸時代とかの日本画で、ツルが松にとまってたりする。コウノトリをツルと間違えたという話も聞くが。いい加減な日本画もあるけど、明らかに実物を見て描いたとおぼしき日本画もある。その観察眼からすると、コウノトリとツルを間違うとは思えない。そんな日本画で、ツルが松にとまってるなら、実際にとまってた可能性もあるんじゃないだろうか?


●2016年9月21日 大阪府鳥類目録を改訂する際の悩み

鳥類目録の改訂で大変なのは、みんなから鳥の確認記録を集めること。こんな時のために日頃から大阪の鳥の情報を会報で集めている訳だけど、どうしても漏れがある。大阪府初記録とかなら、たいてい報告をしてくれるけど、それ以降の観察を報告してくれているとは限らない。大阪府を大ざっぱに区切った分布図を作りたいし、季節毎の出現パターンも押さえないといけない。そして出現頻度を大ざっぱに5段階評価。となると、観察頻度少なめな種の記録をいろんなツテをたどって集めることになる。これを積極的にこなす人が一番大変。今回は編集長が頑張ってくださるので、本当に助かる。
いつもなら、さほど悩まないけど、今回は悩んだのは分類学的な位置づけ。というか同定。昔は良かった。セグロカモメもメボソムシクイもオジロビタキも一種だった。が、しかし日本鳥類目録の最新版でセグロカモメは3種に分けられた。メボソムシクイも3種に分けられた。オジロビタキもなにげに2種に分かれてる。今までの記録がどれに該当するか考えないといけない。分からんものは分からんのだけど、なにがしらの見解は必要になる。同定に強い人が編集委員にいないと困る。幸い最適な方に協力頂けたので、もうおんぶにだっこでお願いする。
結局、セグロカモメは3種ともいることになった。メボソムシクイは2種いるのは確実。3種めは確実な記録なし。オジロビタキは、幸い1種だけとの判断になったが、今までと和名が変わることになる。ついでに同定の難しいグンカンドリ類の判断もお願いした。

あとは、各種の解説を整えて、写真をそろえて、ってのが面倒だけど。なんと、気付いたら編集長さんがドンドン進めて下さっている。一応、編集委員の一画を占めてるらしいんだけど、時々編集長さんが相談に来られるので、あーだこーだ言ってるだけで、何もしてない。編集長さんと同定担当委員さんだけで改訂はちゃんとできたんじゃないかなぁ。
というわけで、少なくとも私に関する限り、編集委員ではあるけど、悩みはない感じ。


●2016年9月20日 暴風警報の行事下見

大分県での干潟合宿から、台風に追いかけられながら、かろうじてフェリーで脱出。朝、大阪に帰ってきた。で、家に荷物を置いてすぐに河内長野から富田林へ、お出かけ。今週末の行事の下見。暴風警報が出てるので、学芸員そろっての下見は中止にしたけど、他に日程がないので、暴風警報が出てる中、下見を一人で強行した。昼頃から雨風が強くなる予報なので、急いでコースを確認して歩く。
駅から川を渡りお寺へ登り、さらにオレンジ園へ。ここんところの雨のおかげで、キノコがいっぱい出てる。もうめちゃめちゃいっぱい出てる。本番にも出てますように。雨は少ししか降ってないけど、どんよりとしていて、風は強め。鳥も爬虫類も出てこないので、下見はさくさく進む。久しぶりのコースは、思ったより迷わない。行事本番で迷いそうな分かれ道をチェック。予定外のトイレも見つけたので、まあまあの下見になったかな。
というわけで、2時間で下見完了。幸い雨風は強くない間に終えることができ、昼には家に帰って来れた。

帰ってきてテレビ見てたら、下見をしてた辺りに避難指示が出たのを見て、胸をなで下ろす感じ。


●2016年9月18日 友の会干潟合宿2日目 龍神パワー炸裂 &ジャリン

朝から雨の予報。潮が引くまでの時間つぶしに、地獄巡りの1つに連れて行かれる。意味不明の庭園で完全にパラダイス状態。温泉卵と温泉プリンを食べたら、雨が降り出した。雷注意報も出ていて、午後から干潟に出られるか微妙。でも、とりあえず干潟のところになる駐車場へ。想定外のビーチサッカー大会が開かれていて、駐車場はいっぱい。雨脚が強まるなか、雨宿りしながら、昼食。でも雨脚は弱まらない。球場のベンチに入ってみんなで雨が弱まるのを待つ。雷もなって干潟に出るのは無理かなぁ、と思っていたら、雨が止んだ。しばらく止んでるらしいとのことで、ほぼ予定通りの時刻に干潟へ出動。
下見の時に見た塩湿地を見に行って、イトゴカイを捕って、戻ってきたら、みんながジャリンを引っ張っている。ハマグリがちゃんと採れるらしい。で、ひかせてもらった。へっぴり腰を笑われた。けっこうコツがいるし、もっとヒモは太い方が食い込まなくて良い。あまり水が引いてない方が引っ張りやすいし、引っ張る場所の選定も重要。おばあちゃんはヒョイヒョイと引いていたけど、なかなか難しく、小さいハマグリ1つしか採れなかった。

結局、2時間ほど干潟で遊んで、予定通り浜に戻ってきたら、再び雨が降り出した。干潟に出ている時間だけ、軌跡のように雨が止んでいたことになる。龍神パワーなんだろう。


●2016年9月17日 博物館友の会別府湾干潟合宿 初日 +難読地名18

昨年調査に来て、いい感じなので、干潟合宿に来よう! という訳で、別府湾での干潟合宿が実現したのであった。
初日は、調査に来た時にジャリンを引っ張るおばあちゃんに出会った運命の八坂川河口。その前に、フェリーで到着組は、空港到着組を待つ間暇なので、とある漁港にいって競りの見学。今月頭にきた時は、魚が少なくてすぐに終わったけど、今日はサメが4匹も並び、それなりに楽しく競りを見学できた。
その後、空港組とJR組を拾って、一路、八坂川河口へ。前半は、上流側の塩湿地へ。草地屋が塩湿地の植物を説明している間、泥干潟を掘り返しては、イトゴカイさがし。今回もイトゴカイ先生が駆けつけて下さっているので、イトゴカイを捕まえていくと、それだけで褒められるのである。今回は、多数のイトゴカイかと思いきや本体は1匹だけのミズヒキゴカイというのを覚えた。
後半は、河口干潟で、カブトガニ探し。だったらしい。というのも沖合にカモメ類の群れが見えるので、近くまで行って帰ってくるだけで時間が終わってしまった。カブトガニは見れず。ホウロクシギが1羽ウロウロしていて、カニをとっては、カラスに追いかけられていた。

さて、話はかわって、全国7126名の難読地名ファンのみなさま。なんど5年ぶりの難読地名。大分県の地名はなかなかに難読。難読地名はいっぱいあるから、とりあえずここんとこよく来ている大分県北東部、瀬戸内海岸の宇佐市、豊後高田市、国東市、杵築市、日出町から10問。

安心院、佐々礼、別府(宇佐市)、杵築、富来、鬼籠、日出、来縄、界、田染

とにかく衝撃的だったのが安心院。大声で「あんしんいん」と言いまくっていたのが恥ずかしい。宇佐市の別府も「べっぷ」とは読まない。こんな風に馴染みの字面なのに読み方が違うってパターンは他にもあるので要注意。日出は、気を抜くとすぐに「ひで」と読んでしまうので、これまた要注意。みんな手強いのである。「来」という字は、たいてい「く」と読むんだな。


●2016年9月16日 合宿前夜祭inフェリー

明日から大分県の別府湾周辺で友の会の干潟合宿。なぜか学芸員をはじめスタッフの多くは、前日夜出航のフェリーで別府港へ向かう。スタッフではないけど、それになんとなく、混ぜてもらった。中条ツアーズってやつだな。乗船が始まるのが午後6時半。それまでにターミナルに来い、という指示。行ってみると、乗船券を渡され(ちなみにまだ金を払ってない!)、乗船開始と共に入って、ラウンジのテーブルを確保するようにという指令。萌蔵とともに乗船開始直前に列に並んで、開始とともに客室ではなくラウンジに直行。持ち込んだ夕食を並べて、テーブルを確保した。
やがて、他の人が合流したので、おもむろに客室に荷物を置いて、テーブルで夕食からの呑み会。中学生は数学の宿題をしているので、それを冷やかしつつ、本を読む。午後10時に電気が消えて、呑み会に集中。

フェリーにもよるけど、部屋の外に座れる椅子やテーブルは多くない。乗船客がみんな部屋から出て、そうした椅子を使おうとするとあふれる。空いてるフェリーならいいけど、混んでる時は、少なくとも慣れた人の間で、密かにテーブル確保の戦いが繰り広げられる。まあ、そんな人は通常多くないから、割と問題にならないけど。
下見の時は、大学生の集団が3組もいて、軒並み部屋から出て船内をウロウロするので、椅子がまったく空いてなくて席の確保に苦労した。その反省を持っての、乗船開始と同時のダッシュであったが、今回は団体客は多くなく、さほど頑張らなくてもよかった感じ。むしろなぜかレストランが混んでいた。
ダッシュするかどうかは、客層を見て判断すべきかもしれない。


●2016年9月15日 博物館学的に市民参加な外来生物調査

うちの博物館で2番目にエライ学芸員(おかん)と3番目にエライ学芸員(萌蔵)が、突然二人でやってきて、おまえは博物館学的な見地から、市民参加型の外来生物調査に取り組みなさいと勧められた。勧めるといっても、我々下っ端からすると、それは命令にも等しい。
でも市民参加型の外来生物調査プロジェクトは、すでにハチ屋を中心に始まってるのでは? 突然のお達しにせめてもの抵抗を試みたのだけど、それはさておき、と言われておしまい。じゃあ同じ立場のつくしんもいるんじゃないかと指摘してみたら、つくしんと交渉するのは自由、と言い放たれるだけ。
仕方が無いので、どうしたらいいか少し考えてみた。

市民を調査に巻き込むのは、とても博物館学的な課題ではある。でも、市民参加型の調査プロジェクトを推し進めるだけなら、べつに外来生物調査である必然性は必ずしもない。いまたまたま外来生物調査プロジェクトを進めてはいるけど、市民参加型調査で盛り上がるのは、むしろ広すぎない対象地域を定めた網羅的な調査の方が向いてる気がする。水系の調査とかぴったり。外来生物調査といったテーマ設定だと、調査エリアは?網羅的調査は難しいよね?といった曖昧な部分が出てくる。で、適当な広さの調査エリアの設定が悩ましい。
市民参加と外来生物調査を結びつけるテーマで思いつくのは、モニタリング。外来生物の侵入や、侵入当初の分布域拡大を押さえるには、市民参加が必須。どこで起きるか予測が難しく、ローカルに多数の目が必要な外来生物のモニタリングは、専門家だけでまかなえそうな希少種のモニタリングや、有志グループでなんとかなるホットスポットのモニタリング以上に、市民参加の必然性がある。ただ、それ自体は必ずしも博物館学的な課題ではない。

博物館学、市民参加、外来生物調査の3題をまとめるとしたら、市民参加による外来生物調査のハブとして、地域の情報センターである自然系博物館が動き、そのネットワークによって広域の外来生物のモニタリングにつなげるって感じだろうか。
となると調査対象となるエリアは、多すぎない複数の自然史系博物館が関与するエリア。瀬戸内地域とか、近畿地方とか。
分野によって外来生物モニタリングへの市民参加をうながす仕掛けは違ってくるだろうから、植物、昆虫、淡水魚、鳥類、哺乳類、海岸生物など各分類群で、モデルとなる対象外来生物を設定して、その分布域調査を試してみる。って感じだろうか。

紀伊半島を対象地域にして、大阪、和歌山、三重の自然史系博物館が連携って話なら、比較的簡単にできるなぁ。近畿地方なら、それに滋賀県と兵庫県を混ぜる感じ。これが瀬戸内地域だと、自然史系博物館がない地域をどうするかが問題になりそう。でも、タンポポ調査を進めるのを同じところがハブになるなら、充分瀬戸内地域でもできそう。
ってゆうか、タンポポ調査との差別化がとても大切になりそうな予感。


●2016年9月14日 冷凍車を守るための戦い

壊れた冷凍室から荷物を運び出し、なんとか冷凍車におおむね移し終わった。が、荷物を運び入れたら、冷凍車は満杯になってしまった。だけど、毎日着々と荷物が届く。冷凍室が壊れようとも、冷凍車がすでにほとんど満杯であろうとも、カピバラいる?と言われれば、要ると答えるし。トビを送ってもいい?と問われれば、送ってと答える。冷凍室が壊れたのは知ってるけど、ウが死んでるんだけど?と電話がかかれば、ただしに送れ!と指令を出す。このままではあふれるので、少しでも開ける努力を続けなくてはならない。つまり壊れた冷凍室での戦いは終わったが、舞台を冷凍車に移して、戦いは続くのである。で、今日も鳥の皮むき。
なんと今月末には、キノコが10箱ほど届くという。いや、きっと10箱もないよ。たぶん5箱くらいかなぁ。などとキノコ屋はいうけど、万が一10箱届いてもなんとかできる体制にしなくては。
でも、遅らせられる荷物は、来月半ば以降に送ってもらえるとありがたいかも。

【追記】
ちなみにウというのは間違いで、どうやらトウゾクカモメ類の幼鳥らしい。届くのが楽しみ〜。


●2016年9月13日 都市の生物多様性地域戦略

都市であろうかなかろうか、希少な生物がいるならその生活環境を守る必要があるし、生物多様性の高い場所があれば、その場所の保全が必要。場合によっては、生物多様性の高い場所の創出を考える必要もある。でも、都市に限らないが、都市では一層重要なのは、消費者・生活者としての市民の意識を変えることかも。
消費者は、消費行動をつうじて、生物多様性に影響を与える。先進国の消費が、熱帯林をアブラヤシのプランテーションに変え、マングローブをエビの養殖池に変えてしまっているのが、その代表的な事例。それは、日本国内でも色んな場所に見て取れる。言い換えれば、消費者の意識改革は、都市以外における生物多様性の保全につながる。
もう一つの都市自体の生物多様性の話。日本のように狭い地域に多数の人が暮らしている場所では、都市自体が生物の生活場所として無視できない割合を占める。都市の生物多様性を高めることが日本全体の生物多様性の保全につながる部分も少なくない。そのためには都市の中に生物の生活場所を確保することが必要だけど、それだけではかえってトラブルを招く恐れが高い。都市生活者の多くは、室内に生物が暮らすことを許さない。ってゆうか、身近に生物がいることを怖がる、拒否する。家にヤモリが出てはさわぐし、庭にアオダイショウがいたら警察に通報するし、駅前にムクドリが群れていたら気持ち悪いとぬかす。こうした都市生活者の意識改革なしには、都市の生物多様性は高められない。生理的に気持ち悪いというのは変えようがないかもしれないが、どこかで共存のラインを引かないと、そもそも都市の生物多様性を高められない。
それをどうするか、都市ならでは地域戦略が求められる。


●2016年9月12日 お父さんの乳首、お父さんの妊娠

昨日のこと、二親に連れられた小学2年生くらいの男の子から質問された。ウシは子どもを1頭しか産まないのに、どうして乳首がいっぱいあるの?
難しい。人間も普通は一人しか子どもを産まないけど、乳首は2つある。乳首というのは、実際に使うより多めにあることはよくある。さらに言えば、お父さんにも乳首がある。絶対使わないのに。つまり乳首っていうのは、使わないからといって、すぐに無くなるわけでもないってこと。
たぶんウシも系統を遡れば、もっとたくさん子どもを産んでいたこともあるんだろう。その頃の名残の乳首が今もいっぱい残ってるだけじゃないかと思う。乳牛は家畜なので、その乳首がみんな乳を出すようにされているんだろう。
お父さんに乳首があるというインパクトがある指摘をしたせいか、これは何とか分かってもらえたらしい。

が、もう一つが難しかった。どうしとお父さんは子どもを産まないの?
真面目に進化生物学を説明するしかないけど、小学2年生にそれは通用しなさそう。さらに進化生物学的な正解が今ひとつ分からない。
仕方がないので、ご両親向けに説明を始める。大配偶子(卵)をつくるのがお母さん、小配偶子(精子)をつくるのがお父さん。卵を作る側は、1つの卵を大切にして、相手を選ぶ。精子を作る側は、大量に配偶子を作って、さほど相手を選ばない。
体内受精の場合、配偶子を受け入れる側は、自分の子どもと分かるけど、もう一方は確実に自分の子どもかの確信がない。だから、妊娠というコストのかかる行動は、配偶子を受け入れる側がすることになる。たぶん体外受精の場合は違った展開になりうる。
だから問題は、どうしてお母さんは卵を、お父さん側に渡して、お父さんの体内で受精させないのかという問題になる。…。どうしてなんだろう?


●2016年9月11日 冷凍室が壊れたら

1週間前に冷凍室が壊れた。壊れたと言っても、中は凍った肉のかたまり。そう簡単には温度は上がらないだろうとタカをくくっていたら、さにあらず。温度はどんどん上昇し。壊れて2日目朝には摂氏0度。3日目朝にも摂氏0度だったので、そうか氷が入ってるから摂氏0度で安定するのかと思ったら、4日目朝にはなんど摂氏4度に上がってる! 冷凍室入口の霜取りが入ってるからだと見破って止めてもらったら、温度上昇は止まった。でも、その後も温度は摂氏4度前後で安定。意味は分からんが上昇が止まったのは有り難いけど、このままでは中身は溶けていく。というわけで、中身の処理はやはり急がなくてはならない。
幸い冷凍車を確保できて、引越作業。というのは、すでに書いた。今回はその波及効果の話。

冷凍室が壊れた!だから今週末の活動では剥いて剥いて剥きまくるぞ!と、なにわホネホネ団に宣言した。剥きまくると言っても、場所の都合もあるから、用意したのは13体。参加者もけっこう集まったけど、コアラとかの目玉がある時はこんなもん。冷凍室壊れた効果はあまりなかったかな。
と思ったが、活動を始めてみるといつもと違った。いつもなら、出したのは剥くけど、まあその後の処理は残っても冷凍室に戻せばいいかぁ、という雰囲気がスタッフ側にも漂ってるのか、妙なのんびりムードがある。
が、しかし今日は違った。出したものはすべて処理して、冷凍室には戻さないぞ!というスタッフの気迫が伝わっているのか、スムーズに作業が進む。いつもよりたくさん処理したのに、なんと午後5時過ぎには終わってしまった。
これなら、もっといっぱい作業を容易すればよかった。

というわけで、困ったときに助けてくれる仲間がいるのは有り難いという話。ただ、来てくれた人の中には、冷凍車がすぐに手配されるとは思わず、融けかけの死体の山の中で、半泣きのスタッフを想像して駆けつけてくれた人もいるらしい。期待を裏切ったかのようで申し訳ない。
この調子なら、本当に危機的な時には、呼びかければもっとたくさん集まって、連日頑張ってもらえたりするかなぁ。ってゆうか、毎回冷凍室が壊れたと言えば、作業はものすごいペースで進むかも! なんてオオカミ少年は思うのであった。


●2016年9月9日 冷凍室からの発掘物

昨日と今日、合計実働時間12時間で、なんとか冷凍室の引越が完了。まあ、自分のを移動させただけだし、移動を断念して冷凍室に残している物もけっこうあるので、冷凍室は空にはなっていないのだけど、久しぶりに冷凍室の隅から隅までチェックすることができた。まったく知らない物は出てこないけど(自分で入れたんだから当たり前)、いろいろと忘れていた物が発見された。人間の記憶とはいかに当てにならないものか、よく分かった。

かなりの容量を占めていたのが、処理途中の哺乳類の皮と、動物園から引き取った鳥類であるのは想定内。
動物園からもらった大きな爬虫類がたくさんあるとは思っていたけど、思ったほどでもなく、むしろ小さな爬虫類がかなり入っていたのには驚いた。
哺乳類の死体は、小まめに処理している中型哺乳類は少ないのだけど、処理を後回しにするウサギはけっこうあって、イタチ類はかなりあった。忘れていたイタチBoxの発見もあった。哺乳類で馬鹿にならないのは、ネズミ、モグラ、コウモリの小哺乳類たち。これはホネホネ団で処理してないからなぁ。
鳥類は、外国産のアホウドリ類が馬鹿にならない量あったのには驚いた。あと、各地からまとまって届いた海鳥の箱が想像以上にあった。さらに西表島からの箱がいっぱい出てきた。処理を進めたつもりだったけど、まだまだだった…。
分かってはいたものの、奈良県や能勢町方面からドンドン届いた死体の小さい箱のかたまりもかなりの分量だった。

量を、底面積40cm×60cmのテンバコを高さ170cmに積み上げた分量を1テンバコという単位で表すなら、冷凍車に移した自分担当のもののおよその量は、
・処理途中の哺乳類の皮:5テンバコ
・動物園の鳥:3.5テンバコ
・西表島の鳥:1.5テンバコ
・動物園の哺乳類:1.5テンバコ
・海外産のミズナギドリ類:1テンバコ
・奈良県や能勢町から送られた哺乳類:1テンバコ
・三重県の水鳥:1テンバコ
・イタチBox:1テンバコ
・その他の水鳥類:1テンバコ
・動物園の爬虫類:0.5テンバコ
・ウサギBox:0.5テンバコ
・小型哺乳類:0.5テンバコ
・肉などのサンプル:0.5テンバコ
・某博物館から送られた鳥類・哺乳類:0.5テンバコ
・動物病院や小さな博物館から送られた鳥類:0.5テンバコ
・その他鳥類:0.5テンバコ
・その他哺乳類:0.5テンバコ
・肉などのサンプル:0.5テンバコ

合計21テンバコ。これだけなら、冷凍室はそこまで埋まらない気もするなぁ。なにか忘れてるかなぁ。


●2016年9月8日 冷凍室の引越

引越というか一時避難だな。冷凍室が壊れたから。よその博物館には冷凍庫が壊れたら、中身捨てたらええねん、と言われてしまうところもあるようだけど、うちの博物館は有り難いことに壊れて4日目に冷凍車の手配をしてもらえた。博物館として当たり前ではあるのだけど、よその話を聞くと、有り難いと思う。
で、有り難いけど、冷凍車が到着したからには、引越作業をしなくちゃならない。冷凍室の温度はすでにかなり上がってきていて、少なくともセンサーのある天井付近は摂氏0度を超えているので、早く引越をする必要がある。が、中身を整理しないと引越はできない。そのためには冷凍室の前に中身を拡げての整理作業が必須。外気温が下がって、さらに他の人の通行がなくなる夜に作業するしかない。
ってことで、午後5時に作業開始。1時間半作業しては、休憩というのを繰り返した。タイムスケジュールは下記の通り。そのたびに冷凍室と冷蔵室の温度をチェックした。必ずドアを閉めて作業したのがよかったのか、作業によって室温が上がることはなかった。
結局4クール6時間で今日の作業は終了。3/4ほどを運び出して冷凍車に入れたと思う。

・第1クール:17:00(冷凍室摂氏2度、冷蔵室摂氏3.5度)-18:30(冷凍室摂氏2.5度、冷蔵室摂氏0.5度)
・第2クール:18:45(冷凍室摂氏2.5度、冷蔵室摂氏3.5度)-20:15(冷凍室摂氏4度、冷蔵室摂氏3度)
・第3クール:20:45(冷凍室摂氏3度、冷蔵室摂氏4度)-22:15(冷凍室摂氏3度、冷蔵室摂氏4度)
・第4クール:22:30(冷凍室摂氏2.5度、冷蔵室摂氏3.5度)-24:15(冷凍室摂氏5度、冷蔵室摂氏5度)

【追記】
翌日、作業の続き。今度は2時間の作業を3回。昨日とあわせて約12時間で作業はほぼ完了。今週末処理する予定の哺乳類や、来週処理するつもりの爬虫類と象の鼻・耳、他の人に処理の相談が必要な物は残してるけど。
昨日、まとまっていて運びやすいものから運んだので、今日は手間取った。よく分からない物のチェックをしている時間が大半だったと言ってもいい。チェック作業には1人サポートしてもらえたから、この時間で終わったとも言える。
この段階で冷凍車の床は9割埋まってしまった。まだ積み上げることは可能だけど、あまりに積み上げると下が崩れる恐れがあるし、冷気がうまく回らない恐れもある。やはりもう少し中身を減らした方がよさそう…。

・第1クール:09:30(冷凍室摂氏2度、冷蔵室摂氏2.5度)-11:30(冷凍室摂氏2.5度、冷蔵室摂氏3.5度)
・第2クール:13:15(冷凍室摂氏2.5度、冷蔵室摂氏3度)-15:15(冷凍室摂氏3度、冷蔵室摂氏1度)
・第3クール:16:00(冷凍室摂氏3度、冷蔵室摂氏3度)-18:00(冷凍室摂氏2.5度、冷蔵室摂氏1度)


●2016年9月6日 街で捕まったアオダイショウの運命

ヘビが出ると人はなぜか騒ぐ。サルは遺伝的に…、てな話を信じそうになる。植物園に出たら、ヘビが出ました!という報告が来る。あーそー。としか思わないけど、報告してくれた本人は本気(?)なので、そんな反応をしたら怒られそう。幸いなことに、直接報告を受けることはまずないのだけど、報告を受けたらとりあえず現地に見に行く。ヘビがいなかったら、それで終了。ヘビがいたら、捕まえてみせる。ヘビで騒ぐ人はたいていヘビを持てないので、ヘビを捕まえて見せると感心してくれる。で、ヘビを連れて帰ってきて、それで一件落着。報告者は、ヘビをどうすると思ってるんだろう? 実際にはヘビは博物館の裏に放される。もう、あんな面倒な奴に見つかるなよ。と声をかけながら。
植物園にヘビが出た!と報告がいったら、やはりこちらが呼び出される。その後の展開は上記と同じ。植物園の人がヘビを捕まえた!と持ってきたら、受け取って、やっぱり博物館の裏に放す。だから、もう見つかるなってば。

ときには、警察から電話がくる。ヘビが捕まった。なんという種類が確認して欲しいと。で、見せてもらえば、大阪市内なら、ほぼ100%アオダイショウ。
多くの場合、逃げたペットなら保護しないといけないし、アオダイショウだとそうではないから、種類を知りたいらしい。で、アオダイショウと判明した場合、そのヘビにどんな運命が待ってるか考えたことはなかった。が、どう処理したらいいか困ってることが多いので、引き取ってまたもや博物館の裏に放す。

今日も、大阪市内の警察からヘビがとある家で捕まったので、種を同定してほしいとの連絡があった。二つ返事で引き受けて、持ってきたのを見たら、やはりアオダイショウ。じゃあ、もって帰って処分します。と言われたのが引っかかった。処理じゃなくて、処分? どう処分するのかと尋ねると、南港に安楽死させる施設があるから、そこに持ち込むという。なんでアオダイショウが殺されなあかんねん! と思いつつ、じゃあ博物館で引き取ってもいいかと言うと、OK。さっさと博物館の裏に持って行って放した。
景観は、いつもの定番の処理方法のような口ぶりだったので、過去にもたくさんのアオダイショウを殺してきたんじゃ無かろうか? 元の家に放したら、クレームが出るかもしれないけど、近所のどこかに放したらよさそうなもんじゃないか。大阪市内にアオダイショウは普通に暮らしている。無害なヘビとも共存できんのか? けっこうむかついた。


●2016年9月5日 今年も博物館実習オリエンテーションおまけの1回

今日の仕事は博物館実習生のオリエンテーション。昨年に引き続き、本来の博物館実習以外のおまけの1回。例によって知り合いの教官付きで、微妙にやりにくい。今回は、なんと8月の実習に来た実習生が一人混ざっている。8月と同じ事しかしゃべらんけど、困ったな。

09:30 博物館実習スタート 資料を配って、出欠取って、名札を作らせて、友の会に入会させる。遅刻者はいない。友の会会員が二人いた。
09:45〜11:25 実習を受ける際の心得(大切な標本を扱うので丁寧に、学芸員の注意事項をよく聞くこと、分からない事があればすぐに質問すること)。博物館の間取り、沿革、事業内容(研究、資料収集、展示、普及教育)、友の会・サークル・フェスティバルなどの説明。
(11:25〜11:30 休憩)
11:30〜12:15 管理棟の案内・解説。学芸員の部屋のあるべき姿を紹介。あちこちに置いてある標本などについて言い訳。
(12:15〜13:15 昼休み)
13:15〜14:35 収蔵庫見学ツアー。3つの収蔵庫をめぐって解説。二層構造の秘密、タイプ標本、火災時の対応など。通路がうまってるとか、なぜか本があるとかにも注目。
(14:35〜14:50 休憩)
14:50〜16:10 展示室見学ツアー(常設展のみ)。メンテナンスやハンズオンがメインテーマ。電気の球換えの難しさ、掃除のしにくさを中心に、ダメなケースを説明。壊されやすい展示やなくなってしまう展示物も紹介。。第5展示室では、展示の意図と、アナログのゲームの難しさも解説。 ミュージアムショップ問題についてもふれた。

8月に同じオリエンテーションを受けた一人を助手と呼んで、時々問題を出したが、ほぼ正解していた。意外と話をちゃんと聞いて、覚えてるみたい。驚いた。


●2016年9月4日 羽根拾い行事の進め方

昨日、羽根拾い行事をしたんだけど、もっといい進め方があるのに気付いた。

とりあえず、今やってる羽根拾い行事はというと、集合場所をみんなで出発。林内に入って、みんなで下を見てウロウロ。羽根を拾ったら、各自で羽根持って聞きに来る。それを片っ端から解説。
出だしには、カラスとかハトとか、超普通でいっぱい拾われる羽根については、拾った人から羽根を借りて、近くにいる人向けに解説。部位の見分け方や、種名の判断ポイント、場合によっては性別や年齢の判断ポイントなど。
このやり方の大きな問題点は、説明したくっても、ぴったりな羽根が拾われない限り説明できないこと。ドバトとキジバトの尾羽の見分け方を喋るには、だれかが拾ってきて、両方が揃うのを待たないといけない。

でも、よく考えれば待つ必要ないよね。拾われる見込のない羽根の話をしても仕方がないけど、確実に拾われる羽根については、あらかじめ用意しておいて、それを取りだして説明すればいいんだ! そうすれは好きなタイミングで効果的に説明可能。今日は出なくても覚えておいた方が良い知識も伝達できる。部位の見分け方も体系的に説明できる(かも)。
このことに、今日、誰かキジバトの尾羽拾って〜、と言ってる時に気付いた。どうして何年も気付かなかったんだろう?


●2016年9月3日 瀬戸内調査in大分 カワツルモは見つかったけど

大分県北部での干潟調査、最終日は宇佐市から中津市にかけての干潟。すでに調査した場所以外を巡る感じ。すでに有名な良い場所は調査してるわけで、残ってるのはいまいちの可能性が高い場所。予想通りいまいちだった。

朝一番に情報があるカワツルモを見に行った。大ざっぱな場所しか分かってなかったけど、愛媛県や兵庫県で見たカワツルモの生息地のイメージから、
・淡水に塩水が少し混じった環境。たぶん堤防に近くて、時々潮をかぶるような。
・常に水がある浅い止水で、明るい場所。
と予測。車で見て回ってたら、堤防沿いの畑地脇に浅い水路があって、兵庫県の生息地によく似た感じだったので、車を止めてもらって見に行ったらビンゴ。サーチイメージが勝利した瞬間だった。けっこう嬉しい。ただ、偶然当たりを引いたようでもあって、同じような水路のたまたま生えてる一画を偶然見に行ったらしい。その周辺を見て回っても他に生えておらず。他の場所を先に見ていたら、諦めていたかも。

その後、漁協の直売所というのに行ってみたら、なくなってた。ただ、その前に見たことのない小さな蛸壺。地元のおじさんがやってきて、クモダコ漁の蛸壺やと解説。1個50円で譲ったるというので、思わず買ってしまった。
その後、近くの漁港へ。アオサギがたくさんいる水揚げの多そうな漁港。その片隅に蛸壺がいっぱい捨ててある。さっき買った小さな蛸壺もある。大きな蛸壺はなんとコンクリート製で、コンクリートの丸い蓋もある。こんなん見たこと無い。捨ててあるようなので、もらえないかと漁港の事務所に萌蔵が訊ねに行ったら、持ち主不明なので勝手に持っていっては困ると断られた。残念。
でもまあ、ここまでは順調だった。問題はここから。

宇佐市から中津市にかけての海岸で、干潟や塩湿地がありそうな場所を順にめぐった。といっても、とっても良い場所であることがはっきりしている。百間浜や大新田海岸はすでに別の季節に来たことがあるので、パス。その他の場所を見て回る。あんなに楽しい百間浜や大新田海岸の周辺なら、他の場所も楽しいに違いない。と思いきや、あにはからんやそうではなく。パッとしない場所を巡って、時間をつぶしただけの感が強い。いい場所って限られるんだなぁ。それならシギチシーズンの今、百間浜や大新田海岸に行きたかったなぁ。まあ、この冬に水鳥調査に来なくちゃならないエリアなので、その下見にはなった。


●2016年9月2日 瀬戸内調査in大分 シギチがいない

大分県の干潟調査、3日目は昨日に引き続き豊後高田市と宇佐市の境にある桂川と寄藻川の河口部へ。その前に朝イチは例によって安岐漁港の競りへ。3度目にして、ようやく競りらしい競りが見れた。トロ箱も50ほど並び、競り人の声は聞き取り安いが、仲買人の符丁はなんのことやら分からず、楽しかった。

その後、今日は、おもに寄藻川河口の辺りから、新浜海岸と言われる(らしい)寄藻川河口左岸の埋立地?の方へ。やっと海側の広大な干潟。おそらく新浜干潟にはシギチの大群が!と思ったら、ほとんどいない…。
ちなみに冬にはマナヅルが来るという看板があちこちにあった。本当に来るんだろうか。マナヅルを含め、新浜海岸の鳥たちという看板が出ていたので、鳥見の名所ではあるんだろう。でも、どういう配列か意味不明な看板に出ている鳥の半分ほどは、海岸ではなく耕作地側で出そうな鳥たち。そして全体の半分以上は冬鳥。渡りのシギチドリ類とおぼしき種は、数種しか出ていない。渡りの季節は期待薄と理解した方がよさそう。
新浜干潟は、河口左岸に不自然な形で干潟が広がっている。埋立地が沈下したんだろうと思っていたら、案の定そうらしい。ただ、地元のおっちゃんによると、畑だったという。畑だったとはちょっと思いにくいんだけど、本当かなぁ。背後に広がる田んぼは、かつては塩田だったそうな。今は塩っけを感じさせずにイネの青が広がっている。

鳥屋やベントス屋は、新浜海岸にはすぐにあきた。というか、近くの河口干潟とさほど変わらない。が、植物屋は、盛り上がっていた様子。砂嘴みたいなのにいっぱい生えている植物がイソホウキギという聞き慣れない植物じゃないかとのこと。改めて確認に来たいらしい。そう言えば、初めて見るような、でもどこかで見たことのあるような植物。鳥屋的には見慣れない外来植物?って感じだった。


●2016年9月1日 瀬戸内調査in大分 塩湿地めぐってカブトガニと遊ぶ

大分県での干潟調査2日目。調査は塩湿地調査の様相を強めてきた。

朝一番で再び安岐漁港の朝市に行くが、再び敗北。やはり風が強くてあまり漁に出てないらしい。漁協のお姉さんにすでに顔を覚えられていて、いつもはもっと多いんですよ〜、と慰め?られる。

その後は、寄藻川・桂川河口域をウロウロ。主に塩湿地をチェック。1ヶ所だけシギがけっこういた。以前、友の会合宿で来た時のことをすっかり忘れていたけど、その神社を見たら合宿の色んな事を思い出した。

午後からは桂川河口の干潟へ。直径4cmほどのカブトガニが可愛かった。イボウミニナやユウシオガイ、ヒナユキスズメを見つけられてよかったけど、石をひっくり返した時の多様性はあまり高くない。期待の塩湿地も植物は4種だけ。期待のシチメンソウは見つけられなかった。

夕刻、宿の前のトンボロ地形を見に行った。トンボロ地形とは、潮が満ちると島になってしまう陸繋島のことらしい。島部分には、ボタンボウフウやハマナタマメなど、今回他の場所では出会わなかった海岸植物がいっぱい。そして、土石流やら火砕流の堆積物が、とっても観察しやすい。思わずオカンの解説に聞き入って、質問までしてしまった。

【追記】
あとで、図鑑をみるとシチメンソウってハママツナと同属の植物だった。赤くなったハママツナとどこが違うか分かってなかったので、たとえ生えていても見つけられなかったな…。


●2016年8月31日 瀬戸内調査in大分 普通種オカミミガイ

昨日から、大分県北部、ってゆうか国東半島周辺から宇佐市にかけての干潟調査。干潟だけでなく、塩湿地や砂浜の調査でもある。むしろ干潟より塩湿地調査の感が強く、植生図で塩湿地の凡例があれば全部見に行くのが暗黙の了解。ついでに良さそうな浜もチェック。
初日は、別府港からスタートして、国東市から豊後高田市の海岸植物名所巡り。ハマボウが生えている入り江を見に行き、近くの広めの砂浜を見に行き、さらにビロードテンツキが記録されている浜に行ってみて、エビ養殖の入り江の端っこをチェックして、午前中は終了。ほぼ植物屋さんだけが仕事した感じ。
午後は国東半島の小さな入り江のポケット干潟を2ヶ所ほど調査。ようやくベントス屋も仕事。小さくてもハマグリが落ちていたり、楽しい干潟だった。最後は再び植物屋さんリクエストの塩湿地。鳥屋は一日暇していた。最後の塩湿地の近くの屋根にツバメがいっぱい並んでいたのが不思議。

で、一番の出来事は、宿に着いたら待っていた。宿は、海の見えるいい立地だけど、電波が入らない。docomoやsoftbankは入るのにauだけ入らない。もしかしたらauのガラケーだけ入らないのかも。だから、この調査の4日間の日記は1日遅れになる。


●2016年8月29日 隠蔽種を含む(かもしれない)種(群)の研究について

隠蔽種が含まれる可能性を頭に留めて、種群として意義がある研究をしていくしかないでしょう。
種を確定させないと研究に意味がないとなったら、マシジミはまったく研究できなくなってしまう。
次々と隠蔽種とやらが見つかっている昨今、めっちゃ困ったことになる。キジバトには、同所的に生息してる隠蔽種がいるかも。てな話すらあるんだから。


●2016年8月27日 ツバメが集団ねぐらに向かう時刻

集団ねぐらで見ていると、早くから帰って来てるツバメがいれば、暗くなってから帰ってくるツバメもいる。この違いはなんだろう?
カラスの研究によると、ねぐらに向かい始める時刻は、ねぐらから遠いカラスほど早いんだそうな。つまり到着時刻をある程度あわしてきてるってことになる。ツバメもそうだとしたら、ねぐらに戻ってくる時刻は、昼間の活動場所までの距離とは別の要因が関係してるってことになる。
普通に考えれば、昼間採食がうまくいかなかったツバメが、粘って採食してたから遅くなったのかもしれない。逆に夕方採食適地を見つけたから、勢いで粘って採食し続けたのかもしれない。
繁殖を終えたツバメが昼間することは、渡りに備えてたくさん食べて脂肪を蓄積すること以外にないから、昼間の採食行動と何らかの関係があると思うんだけど、違うかな? だとしたら、昼間の活動場所での採食行動を観察して、食べた量を評価しつつ、ねぐらに向けて動き出すタイミングを記録すれば、ある程度結論を出せそうに思う。誰かやらないかな?


●2016年8月26日 読書サークル 第87回会合覚え書き

隔月で、課題本の紹介文を持ち寄って、本についてあれこれ言い合うサークル。今日の会合で出た本についての意見を記録。

今日の課題本は7冊。その内、1冊は宿題に。さらに前回以前からの宿題となっていた本4冊のうち1冊は、さらに宿題となったので、9冊についてあれこれ話し合った。
ちなみに各人は紹介文を書いてきていてて、4つを最大として★を付けている。

●「ヒョウタン文化誌」
(紹介文3つ、平均★数は3.0)
 ヒョウタンについての色々が書いてあると評判は悪くないのだけど、生物学的な意味でのヒョウタンの紹介がほとんどない。たとえばヘチマやキュウリとの関係とか、食べられないのかなど、すぐに思いつく疑問に答えてくれないとのこと。

●「鳥ってすごい!」
(紹介文2つ、平均★数は3.5)
 鳥についていろいろ書いてあって評価は高め。鳥類学を広く紹介しているようで、その多くを著者自身が研究しているのには感心。ただ、タイトルがベストセラーになった『昆虫はすごい!』を明らかに意識しているのはいかがなものかという意見が。

●「鳥たちの驚異的な感覚世界」
(紹介文2つ、平均★数は3.5)
 本当に鳥の感覚世界についての驚異的な新しい情報がもりだくさん。知らない話がいくつも出てくると高評価。

●「虫のすみか」
(紹介文3つ、平均★数は4.0)
 『裏山の奇人』である著者のファンの心を鷲づかみ。らしい。

●「チェンジング・ブルー」
(紹介文3つ、平均★数は4.0)
 地球の歴史について、とても読みやすく勉強になる一冊とのこと。

●「コーヒーの科学」
(紹介文2つ、平均★数は3.5)
 コーヒー好きにはお勧めとのこと。

●「21世紀に読む「種の起原」」
(紹介文2つ、平均★数は4.0)
 原著の『種の起原』よりも読みやすいらしい。たしかに『種の起原』を読むのはけっこうつらいからなぁ。

●「植物が出現し、気候を変えた」
(紹介文3つ、平均★数は3.0)
 植物化石の研究者が、地球の気候変化を植物に結びつけて説明したり、解明するのに植物化石研究が役立ったと、我田引水しまくりの一冊。知り合いの植物化石研究者も、こんな研究をすればいいのに、と若干2名がしみじみと言った。

●「琵琶湖ハッタミミズ物語」
(紹介文2つ、平均★数は3.5)
 ハッタミミズを探したくなる楽しい本。ハッタミミズをてこにミミズに興味を持つ人を増やしたいという著者の想いがよく伝わってくる。


●2016年8月24日 健康診断の日

今日は年に一度の健康診断。近所の消防署が会場。普段は入れない消防署の奥深くに入れるのが少し楽しみ。というのはさておき、健康診断の結果は、それなりに気になる。とりあえず今日時点で結果が分かるのは、血圧と聴力と腹囲程度。そこまでは問題なかったから、現時点では、目が悪いだけの健康体ってことになってる。
ちなみにレントゲンも今時はデジタルで、撮った瞬間の自分の画像が見れて楽しい。その画像を添付で送って欲しいと頼みそうになった。

過去10年で問題あり判定が付いたことがあるのは、LDLコレステロールと中性脂肪(4この2つはなぜか同時には問題ありにならない)、尿酸値(最近は大丈夫)、空腹時血糖値とHbA1c、赤血球(1回だけ多すぎた)、そして最高血圧。
血圧が高かったのは3年前と2年前。それ以降は、健康診断に行くときに、自転車を飛ばさず、ゆっくり漕ぐようにしている。それでクリアされてる気がする…。

ともかく気が小さいので、何か問題があると言われると、食生活を中心に変更を試みたりしている。この一年に試みたのをリストアップしておくと、
・職場でも調査時にも、飲み物は原則砂糖無し。基本はお茶で、ときに飲むコーヒーも原則ブラック。どうしても違うものが飲みたい時は、牛乳を飲んでる。もう低温殺菌牛乳にこだわらない。
・パンを控える。昼飯や昼間のおやつに、よくパンを食べていたのを原則禁止に。どうしても食べたい時は食べるけど。
・昼食にサラダを付けて、最初に食べる。なんか血糖値コントロールにいいとの噂があるので。ほんまかは知らんけど、体に害はないでしょう。
・晩ご飯の食べる量を控える。友の会合宿など出先や、パーティ時は食べ過ぎることもあるけど…。
・糖質カット、グルテンフリーとの呪文を唱える。唱えたからって実践してるわけじゃないけど、少しは減ってるでしょう。

というわけで、血液検査の結果待ち。果たして今年のコレステロール系や血糖値系の数値がどうなってるか。これでダメならどうしよっかなぁ。


●2016年8月22日 鳥の眼の偏側性

鳥の左右の眼の役割分化は、胚の時の光の当たり方の偏りによるらしい。となると、暗い場所に産卵される鳥と、明るい場所に産卵される鳥で変わってきそう。
左右で役割分化があるなら、カモは寝る時、捕食者を探す方の眼を見せてるのかな?


●2016年8月21日 特別展 やばい研究

今日は、なぜかイベントの打ち上げが、会議の様相を呈し、将来の特別展の構想がまとまった。話はミニ人から始まる。

ミニ人っていうのは、石に見られる模様を、小さい人の化石であるとの主張。人だけでなく、さまざまなミニ動物の化石もあるってことになっていて、生物多様性云々と言い出すから面白い。
もちろん大部分の研究者はまともに取り合わない。ってゆうか、主張しているのは一人だけ。でも、その人は強い心を持っていて、みずからその主張のための雑誌を作って、あちこちに配っている。うちの博物館でも所蔵している!
頭の固い研究者はどうしても認められないようだが、このミニ人の主張は、ちゃんと分類学の記載の手続きに乗っ取っているので、この記載は分類学上有効であるっぽい。もちろん常識的に言って、この主張は間違っているが、分類学的には有効。実は分類学のシステムは脆弱で、ちょっと知識のある人が悪意をもって、妙な記載をしまくれば、容易に崩壊する。ミニ人を主張している人は、真面目にミニ人を記載したのに、みんなに無視されている。科学とは何かを考える上で、かっこうの話題になる。
同じラインで、取り上げたら面白そうなのは、鼻行類だろうか。あるいはフライング・スパゲッティ・モンスターとか。
この3つに共通するのは、単なる思い込みだったり、ギャグであったり、宗教に対する対抗措置だったりするのだけど、疑似科学ではないってこと。少なくとも手続き上、ミニ人はとても正当な科学と言える。科学は当然ながら間違っていることもあるってわけ。むしろ、間違っている事を示せるかどうかが科学の定義だとするなら、ミニ人こそが科学かもしれない。

なんか似てるけど、ぜんぜん違うのは、EM菌などをはじめとする疑似科学。疑似科学が疑似科学とされるゆえんは、データの扱い方・読み方がまるで間違っていたり(あるいはわざとねじ曲げていたり)、論文と称するものが科学的形式に従ってなかったりってところだろう。つまり科学とは方法論であり形式である。
というように、科学とは何かって特別展をするには、とても有効。タイトルも決まったし、意義ある展示になりそうだけど、面倒な敵がたくさんできそうで、イヤだなぁ。そういう意味では、やばい特別展になってしまう。


●2016年8月19日 海水を飲む鳥

有名なのは、もちろんアオバト。これがミネラル補給だとすると、じゃあ他のハトは海水を飲まないのか。どこからミネラル補給をしてるのか。翻えって、じゃあアオバトはそこからミネラル補給しないのか。色々気になる。
などと考えてたら、シッポがやってきて、江の島でドバトが海水を飲むのを見たという。へぇと思って、文献を軽く調べると、

●渡久地豊・金城道男 ・市田豊子(1996)カラスバト Columba janthina の塩類摂取行動.Strix 14:186-189.

というのが引っかかった。そのイントロによると、他にもヒメモリバトやモリバトが海水を飲むという報告があるらしい。
この報告では海水を飲む行動と合わせて、小石や砂、貝殻を食べることが報告されている。どうやら海水を飲む以外には、固形物から塩類を摂取すると考えられているらしい。
でも、わざわざ海水を飲みに行く行動があることを考えると、海水を飲むのには少なからぬメリットがありそう。

さらにネットを検索すると、関東や東北の方では、アオバトが鉱水や温泉水を飲みにくる場所もあるらしい。いずれにせよ、塩類摂取は重要ってことか。
ハト類などの胃の中の小石は、胃石などと言って、消化を助けるとか言われることが多いけど、つねづね本当かなぁ、と思っていた。塩類摂取のためとされた方が、納得できる。


●2016年8月18日 河原のカワラヒワのねぐら

淀川鵜殿にツバメのねぐらを見に行った。ちょっと早めに行って、ここ数年ツバメのねぐらができている掘り下げた場所のヨシ原の前に陣取った。まだツバメは来ないな、と思ってぼんやりしていると、小鳥の群れが飛んできて、ヨシ原の端っこにとまる。最初はなんとも思ってなかったのだけど、ふと見るとカワラヒワだ。カワラヒワの集団ねぐらだ!
というわけで、まだツバメが集まってきそうにないので、カワラヒワの集団ねぐらを観察することに。
10数羽から50羽程度の群れが、下流の方から飛んでくる。で、掘り下げられた場所の北東の端っこ辺りにとまる。何羽か行きすぎている気もするけど、多くの個体は北東端辺りに集まって来る。最初に気付いたのは17:40頃。まだまだ集まって来る!と思ったら、18:15以降、同じように飛んで行くのはスズメの群れだった。ややこしい。この30分ちょっとの間にカウントできたカワラヒワは、約370羽。そこそこのサイズの集団ねぐらになっていた。

で、日没が迫ってくると、ツバメが周辺を飛びまわるようにはなったのだけど、予定のヨシ原を低く飛ばない。ふと気付くと、予定の場所よりはるか南で乱舞している。カワラヒワのねぐらは観察できたが、ツバメのねぐらの観察はちょっと不満な結果になってしまった。


●2016年8月17日 博物館実習 2016年夏期一般コース オリエンテーション

今日から5日日程で博物館実習がスタート。大学生が18人。初日の今日はオリエンテーション。オリエンテーションもこれで5回目。でも、毎回段取りを忘れるので、次回のために今日のスケジュールを記録しておく。

09:30 博物館実習スタート 資料を配って、出欠取って、名札を作らせて、友の会に入会させる。遅刻者はいない。友の会会員が二人いた。
09:50〜11:20 実習を受ける際の心得(大切な標本を扱うので丁寧に、学芸員の注意事項をよく聞くこと、分からない事があればすぐに質問すること)。博物館の間取り、沿革、事業内容(研究、資料収集、展示、普及教育)、友の会・サークル・ネットワークなどの説明。ブログの書き方の説明。博物館に足りないものとして、お金、人手、スペース。
11:25〜12:00 管理棟の案内・解説。学芸員の部屋のあるべき姿を紹介。あちこちに置いてある標本などについて言い訳。
(12:00〜13:00 昼休み)
13:00〜13:55 収蔵庫見学ツアー。3つの収蔵庫をめぐって解説。二層構造の秘密、タイプ標本、火災時の対応など。通路がうまってるとか、なぜか本があるとかにも注目。
(13:55〜14:10 休憩)
14:10〜15:40 展示室見学ツアー(常設展+特別展)。メンテナンスやハンズオンがメインテーマ。電気の球換えの難しさ、掃除のしにくさを中心に、ダメなケースを紹介し、壊されやすい展示を説明して歩く感じ。第5展示室では、展示の意図と、アナログのゲームや仕掛けの難しさも解説。 ミュージアムショップ問題についてもふれた。
15:40〜16:00 実習ノートの提出。

実習ノートを書く際に、納得したとか、勉強になったという文言をNGにするのを忘れた。午前中から順に書いている者も多いので、これは朝から言い渡しておく必要がありそう。


●2016年8月16日 来年のナイトハイクのプラン

手羽先実習が終わったと思ったら、その夜、ナイトハイクの下見の下見に行ってきた。なんと参加者5人の内、4人が手羽先実習からの連チャン。その内、2人は翌日も仕事があるという。みんな体力あるわぁ。
で、今年最後(?)のナイトハイクの下見の下見は、岩湧寺。生き物の多いエリアだし、なんと言ってもムササビがいる。どう転んでも楽しいだろうとの思惑。滝畑ダムのところのバス停をスタートした直後は、この季節にまだアオバズクが鳴いていて、良い感じに始まった。しかし、風がなくて蒸し暑い夜道を歩いても、他に鳴く鳥はおらず、哺乳類の気配もない。陸棲のホタルの幼虫が道ぞいのあちこちで光っているのは面白かったけど、それだけ。割と平坦な道だろうと思っていたのだけど、意外とアップダウンがあってけっこう疲れた。
岩湧寺は、ムササビで知られている。夜道はつまらなくても、岩湧寺で夜を過ごせばムササビが見放題。という思惑はあっさり外れた。どうもムササビが見やすいのは活動開始直後の日没直後だけで、深夜にはどこかへ出かけてしまってるらしい。以前は、タヌキにも出会った場所だけど、他の哺乳類にも出会わず。仕方が無いのでペルセウス座流星群でも見ようと寝っ転がったが、思ったほど流れない。
数時間の仮眠の後、始発を目指して南海天見駅へ。道中もとくになにも出ず。ただ夜歩いただけだった。夜歩いて楽しいコース、時期を見つけるのって、意外と難しいなぁ。


●2016年8月14日 今年の手羽先は信州黄金シャモ

今日は近頃毎年恒例となった手羽先のホネ標本作り実習。毎年、違った地鶏の手羽先を使っていて、今年は信州黄金シャモ。なんか長くて大きい。
ちなみに毎年、違った地鶏の手羽先を使っているのは関係者の趣味だが、地鶏を使っているのは、しっかりした成鳥でないとホネの標本にしにくいから。
毎年、手羽先実習に出れば、日本各地の地鶏の手羽先のホネコレクションが出来上がるって寸法。そんなコレクションをしたがる人に心当たりは、一人しかないけど。


●2016年8月12日 ザトウクジラの指のホネ

昨年9月に大阪府岬町に打ち上がったザトウクジラのホネを回収した。海岸からではなく、裏の砂場から。頭とか腰椎などは先月回収してあったので、今日は頸椎、胸椎、肋骨、尾椎、そして指骨。尾椎の先の方はまだ肉が付いていたので、もうしばらく砂場に放置。残りの内、指骨以外は洗って干した。
指骨は処理がやっかいなので、砂場から引き上げるだけで精一杯だった。なんせクジラ類の指骨は関節していない。鰭の中に並んで浮いている。だもんでどれがどのホネで、どこに並んでいたのかを記録しておかないと、あとで並べることもできない。ってことで、面倒な作業が待っている。
1:平らに埋めた鰭の辺りの砂をそっとどけて、並んだ状態のホネを露出させる。
2:トレーシングペーパーをつなげたり、透明な大きなビニールをかぶせて、それぞれのホネの並びを写し取っていく。
3:写したホネにナンバーを付けて、同じナンバーをそれぞれのホネ自体にも書き込む。
4:ホネの裏表と向きが分かるように、ホネに印を付ける。
という作業をして始めて、ホネを回収して洗える。1は自分でやったが、2〜4は面倒なので元芸大生の方にやってもらった。こういうことは上手だなぁ。

クジラの指のホネは原則5本だと思っていたのだけど、ザトウクジラの指は4本だった。驚いて物の本を見たけど、それで合ってるらしい(第3指がないんだな)。物の本とは『鯨類・鰭脚類』(東京大学出版会)。それによると、ザトウクジラの指骨数は、I2、II7、IV6、V3。
でも、我らのザットンの指骨数は、右がI3、II8、IV9、V3。左がI4、II8、IV8、V3。痕跡的なのも含めてるけど、予定と随分違う。そして左右も非対称。いい加減だなぁ。


●2016年8月11日 食肉類の鎖骨学

昔は、ネコ科には痕跡的な鎖骨があるけど、イヌ科やイタチ科には鎖骨はないと思っていた。でも、イヌ科やイタチ科にも痕跡的な鎖骨があることを知ってる。とはいえ、まだまだ鎖骨には謎がいっぱいあるんじゃないかと思った。
今日はイタチ祭り。イタチ類の鎖骨をたくさん見た。チョウセンイタチの鎖骨は長さ3mm、幅1.5mm程度の小さいもの。子どもも大人もさほど大きさは変わらない。アナグマの鎖骨は、イタチに似てて少し大きい。テンの鎖骨はイタチより細く長い。イタチ類の鎖骨は、タヌキより前よりにあると思う。
同じような食肉類なのに、いまだかつてハクビシンの鎖骨は見つけられていない。食肉類の中での鎖骨の有無を含めて謎は多い。


●2016年8月10日 ツバメのねぐらの引っ越し

昨日、今日と、ツバメのねぐらを観察に行った。

昨日行った久米田池。さほど大きくない集団ねぐらだけど、毎年できている。例年、いくのが8月下旬にずれこんでいて、すでにツバメの集まりが悪くなっている。その反省に立って、今年は最盛期と思しき8月上旬に。今年は期待できるぞ〜、と楽しみにしていったのだけど、完全に期待外れ。日没過ぎに4羽が飛びまわり、ヨシにとまったかな?と思ったけど確認出来ず。その後、9羽の群を見たけど、どこかに行ってしまった感じ。事実上、集団ねぐらはなかった感じ。
後から聞いたところによると、ツバメは集まっていたのだけど、数日前に花火大会があって、ツバメはどこかに行ってしまったらしい。どこに行ったんだろう?

今日行ったのは堺市美原区の新池。昨年、同じく美原区の舟渡池にツバメの集団ねぐらが見つかった。で、今年もと地元の人は楽しみにしていたのだけど、7月時点で集まってない!と話題になり、周辺を探した結果、新たに見つかったのが、この新池の集団ねぐら。おそらく舟渡池の集団ねぐらが移動したと考えていいだろう。
でも、どうして集団ねぐらが移動したんだろう? 舟渡池のヨシ原は、今年もちゃんとある。充分ツバメの集団ねぐらに使えそう。ってゆうか、舟渡池のヨシ原は、昨年使われる前から、使えそうな感じだった。それが昨年初めて使われて、今年はもう使われない。理由は分からない。

ツバメが集団ねぐらを引越させる理由はなんなんだろう? ヨシ原がなくなったというのは分かりやすい。花火で驚いて移動したとされるケースもいくつも知られている。でも、理由が分からないことも多い。知らない間に花火で追い出されたのかもしれないけど、なんか他に理由があったりもするんだろうか?


●2016年8月9日 友の会南三陸合宿オプション

昨日書き忘れた友の会合宿4日目。南三陸合宿なのに、オプションは少し離れた岩手県奥州市の種山高原。正直、一番涼しかった。ってゆうか、集合の仙台は今年一番の暑さと言っていて、猛暑日になってくれたり。これじゃあ大阪にいるのと変わらん! それじゃあ南三陸や気仙沼は涼しいかというと、やっぱり30度越えていて、大阪よりましとは言え暑い! 確かに夜はかなり涼しいけど、さほど東北来た感じがしない。と文句を言いまくっていたけど、種山高原の夜は寒いくらい。昼間も涼しい。東北はこうでなくっちゃ!

で、朝、宿を出発する直前、担当者が今日の予定を話していると、向こうの方から猛禽類の高い声がする。なにかなぁ、と思って見ていると、2羽の大きなタカが上がってくる。正直成鳥だけだと迷ったかもだけど、片方はとっても分かりやすいイヌワシ幼鳥。イヌワシだ!と叫び担当者の話そっちのけで、イヌワシ観察。みんながデジカメで撮影しているのを見て、自分もデジカメを持ってきていることを思い出し、慌てて出してきたけど、タイミングを逃してしまったのが唯一の心残り。
今回の密かな目的は、ドクウツギの果実を食べてみること。物見山の麓にいっぱいあると聞いていたのだけど、予定通り果実をつけているドクウツギがいっぱいある。さあ食べるぞ。と思ったら、担当者から絶対に食べるなとの強いお達し。え〜、そのために来たのに〜。でも、担当者に逆らう訳にはいかない。食べるのは諦めて、味見をするだけにした(つまり味を見てはき出したってことね)。タネを噛んだら、かなりの猛毒のはずなので、ちょっと緊張しつつ味見した。ジューシーで、ほんのり酸味がありつつ、それでいてけっこう甘い。はっきり言ってかなり美味しい。
で、満足してたのだけど、少し歩いて行くと道ばたにクマの糞。その中はドクウツギの種子だらけ。さらに行くと、道ばたにテンらしき糞。これまたドクウツギの糞だらけ。みんな食べて問題ないやん! だから果肉は大丈夫なんだよ! でないと、種子散布されないし。

イヌワシにドクウツギと(少なくとも個人的には)とても盛り上がった。オプションになって、参加者数が減ったのはとても勿体ないくらい楽しかった。


●2016年8月7日 友の会南三陸合宿 3日目

今日は化石探しからの土産物購入タイム。もう合宿はオプションを残して終わった感が強い。化石採集にはさほど興味がないのだけど、巻いてるアンモナイトは少し採りたいので、少し頑張る。1円アンモと呼ばれる小さなアンモナイトは何とか見つけることができた。流行にのって、嚢頭類を探したけどさっぱり分からず。そもそもどれが単なる石に付いた染みで、どれが化石なのか、素人目にはさっぱり分からない。終了間際、地元でよく化石を採集してそうな方が、コレは魚竜の椎骨じゃないか!?と盛り上がってたけど、その知り合いが、単なる染みでしょう。と冷たくあしらい。ああ、化石屋さんでも、意見が分かれるんだと、思ったりした。
終了の声がかかった時、自分で採った化石を落として、泣き叫びながら探している子がいたので、手伝ってみた。他の人が、格好いいアンモナイト化石をあげて泣き止んでもらおうとしても、それでは納得できないらしい。もう終わりやと言われたら、寝転がって手足をバタバタさせてるのが印象的。このポーズを生で見たのは初めてだった。確かに自分で見つけた化石を持って帰りたいよな。と思ったのだけど、あとでお父さんに聞くと、いっぱい見つかる植物化石の断片だったそうで。それにそこまでこだわってたのかぁ、とちょっと同意できないかもと思ったりもした。

この合宿の3日間、となりからずーっと話しかけてくる高校生を冷たくあしらいつつ、バスに乗ってる間は、ずーっと外を見ていた。南三陸によくきている人がみんな、道ばたになにげなくカモシカが立ってるという話をするから。是非、自分の目でカモシカを見たいから。でも、ぜんぜんカモシカは立ってない。すでに諦めてたんだけど、昼食場所に到着する寸前、カモシカ!の声。見ると、芝生の斜面の上に、なにげなくカモシカが立っていた。全然動かないから、剥製を置いてあるのかもという一抹の不安もありつつ。カモシカに出会えて、よかった。
が、しかし、やはりカモシカの剥製だったのかもしれない。というわけで、大急ぎで昼食を食べて、カモシカが立ってた辺りに急行した。なんと動くカモシカがいた。20mほどの距離でゆっくり観察できた。口元がなんかおかしいのは、病気に罹っているらしい。でもカモシカはカモシカ。初めて動くカモシカが見れて嬉しい。喜んで、写真も撮っていたら、こちらに気づき、逃げていってしまった。
みんなが昼食を食べているところに戻ると、ようやく弁当を食べた子どもが、カモシカを探しに行きたい!と言っていた。ごめんなさいごめんなさい。もうカモシカは行ってしまいました。

仮説住居の商店街でクレープとマフィンを食べて、合宿終了。


●2016年8月6日 博物館友の会合宿 2日目

午前中は、尖った岩がゴロゴロした磯へ。岩には軒並みウミユリやサンゴなどの化石が入っている。採集は禁止なのだけど、化石好きは驚喜して撮影しまくっている。で、化石担当は引く手あまた。呼ばれて急いで向かおうとして、ひっくり返って、両脚と片手に大きな擦り傷をつくっていた。こんな場所で走ってはいけない、という教訓が得られた。これが参加者がこけたのなら大事、スタッフであっても頭をうっていたら洒落にならないところだったが、幸い軽傷。みんなから、走ったらアカンやんと言われ、さほど同情されず。自分で車で薬局に行って手当をしていた。
化石にあまり興味のない人は、海岸の植物などで盛り上がる。岬の先にプチ塩湿地があって、ウミミドリとオオシバナという瀬戸内では見られない植物があって、植物屋が熱く解説。堤防の内側にも妙な塩湿地があって、こちらは大阪でも見られるハマサジとハママツナ程度しかない。というのを聞いた岩手県民が、岩手にはハマサジがないから見てみたいと言い出す。瀬戸内では全然珍しくないハマサジが、東北では珍しく、もしかして北限? 大阪側の勉強不足があらわになる。
午後は、谷筋をあるいて田束山登山。といっても1.5kmのコース。下見時に盛り上がったタチガシワとクロカンバは、予想通り参加者の心をつかまず。ベニバナヤマシャクヤクは見つからず。担当者はショックを受けていた。代わりに人気があったのは、ヤマユリ、クルマユリ、レンゲショウマ。レンゲショウマは、初めて見たけど、とても綺麗だった。あと、覚えたはずのタチガシワを自力で見つけられなかったのは、個人的にもショック。

宿に帰ったら、すぐに田んぼに出かけてクログワイ?の花か実付き探し、あいにく見つからなかったが、大きなトウキョウダルマガエルが採れて満足。夜、宿に宮城県民がやってきて、この辺りにクログワイありますよ〜、とあっさり解決してしまった。


●2016年8月5日 南三陸合宿 初日

初日は昼に仙台駅集合。昨日、仙台入りしたもんで、朝から暇。どこかに寄るほどの時間はなく、なんとなく一番に集合場所に着いてしまった。やむを得ず、世話役や参加者が必ず通りそうなベンチに座って、本を読んで時間つぶし。1日1冊と思って6冊も本を持ってきたから、ちょうどいいかも。
意外と集合時間直前になって、世話人も参加者も集まり、ようやくバスに移動。人身事故で朝方の仙台周辺のJRは運休や遅れが出まくっていたが、大きな問題はなかった。

まずは田束山の山頂に行って、今回の合宿で立ち寄る場所を一望に。リアス式海岸ならぬリアス海岸なんやね。とアチコチでぼそぼそと確認する声。ヤマナシが実を付けていたが、堅くて、甘くなくて、ジューシーでもない。ほんのりとナシかも?という味がするだけという、いったい誰が食べるねん!という果実であった。

宿に着いたら、すぐにトウキョウダルマガエルを目指して田んぼをウロウロ。下見時よりもトウキョウダルマガエルが多くて、いっぱい田んぼに飛び込むが早くて取れない。水田雑草が楽しげに繁茂している一画を見つけたので、一通り採って帰って、植物屋さんに訊ねる。オモダカ、サンカクイ、ホタルイ。カヤツリグサ科でも、この辺りグループの検索表は意外と素人でもなんとかなる。そして花も実もついてなかった謎の植物は、ミズニラ!と思って採ったのだけど、あっさり岩手県民に却下された。じゃあ、何かというと、該当種がなかなか見つからない。クログワイが一番似てるけど、分布が関東以西となっている。で、明日、花か実を付けた個体を探すことに。 
夕食の後は、ライトトラップ。宿の側に設置したトラップはあまり面白くないが、個人的にはヒラタドロムシの成虫が見れたり、小さなヒメドロムシがいっぱい来ていて楽しかった。やがて、近くのローソンがすごい!という情報が広まり、みんなローソンへ。遅ればせながら行ってみると、大きなガムシがいっぱいのガムシ祭り。客観的に見て、ゴキブリそっくりの虫を大量にゲットしている人たちがいた。


●2016年8月4日 仙台への船旅

名古屋から船に乗って、仙台へ。船はすいていた。仙台から北海道へ行く客が多く、仙台で大勢が乗り込んで苫小牧へは満員になるらしい。苫小牧へ行かれるお客様、客室は満杯になりますので、空いているスペースに置いてある物を、どけてください。ってアナウンスが流れた。

名古屋駅からフェリーターミナルまで、いつもはあおなみ線の野跡駅から歩いているのだけど、名古屋駅からの直行バスが便利ですというアナウンスを真に受けて、乗ることに。なんとなくバス乗り場をネットで見たのだけど、プリントアウトを忘れ、おぼろげな記憶を頼りにウロウロ。見つからないので通りで何かを配ってる人に尋ねるのだけど要領を得ない。なんとか名鉄バスセンターというところから乗るらしいと分かり、ななちゃん人形のところを上がれ!という指令を頂き、バタバタと急いで、17:20発のバスにギリギリまにあった。バスセンターがビルの3階と4階にあるなんて、意外すぎる。
名古屋港出航は19:00。予定通り出航したので、ギリギリ名古屋港を出たところのスナメリが見えるかも。と思ったけど、向き変えるだけで暗くなってしまった。大阪より日没が早い気もする。

そして、今日、夜明け前の午前4時過ぎに起き出した。伊豆大島が見える。で、まだ暗い海を見てると段々鳥が見えてくる。どうやらオオミズナギドリばかりらしい。明るくなってもオオミズナギドリばかり。ハシボソミズナギドリはいないなぁ、と思ったまま千葉県沖終了。犬吠埼を越え、茨城県沖に入った辺りでハシボソミズナギドリが13羽飛んだ。そして、フルマカモメ?というのが2羽浮いていて盛り上がったが、その後はぱったり鳥はいなくなった。福島県沖は何も出ず、宮城県沖になって、少しオオミズナギドリが飛び始め、やがてウミネコが増えてきた!と思ったら、仙台湾沖だった。
仙台港では、ウミネコ約25羽がフェリーにまとわりつき、甲板に着地もして、スナック菓子をもらっていた。

イルカ類は朝一番に千葉沖で、ハンドウイルカ系?7頭の群れを見ただけ。フェリーにはイソヒヨドリの雌タイプが1羽乗っていて、時々飛び立って、船と一緒に飛んでいたが、はるかに見えてる陸は目指さずに船に戻るを繰り返した。結局、名古屋から宮城県まで乗船したもよう。


●2016年8月3日 ヒトと動物のホネくらべ

今日は教員のための博物館の日というイベント。学校の先生に自然史博物館が提供できるプログラムを体験してもらうってイメージだろうか。あるいは自然史博物館って、意外と学校教育に役立つんだなぁ、と思ってもらう企画というか。
で、40分でホネのプログラムをしろというお達し。アライグマの全身骨格の貸し出しキットとか、シカとアライグマの頭骨の貸し出しキットとかがあるので、それを活用してもらえそうなネタを仕込むことに。
前半は、ヒト(参加者自身)のホネと、ネコ(orキツネ)のホネの比較。後半は、肉食動物のネコ(orトラ)の頭骨と、草食動物のシカ(orウマ)の頭骨の比較。頭骨比較はさわってもらう感じで。問題は、40分に収まるか。

ヒトと食肉類のホネ比較は、
・脊椎のラインに、四肢が付いてる基本構成
・四肢が、付け根1本、次が2本の構成
・肩関節、肘関節、股関節の構造
などなど基本的に同じと説明した上で、
・後足の付き方
・鎖骨の有無
が違うって話。

肉食動物と草食動物のホネ比較は、
・目の付いてる向きの違い
は、意外と分かりにくい一方で、
・顎関節の構造と動きの違い
・それに応じた前臼歯と臼歯の形の違い
は動きもあって分かりやすい。って話。

トラばあちゃんの
・歯槽膿漏の話 →歯磨きしよう!
・ホネに要らん突起が付いてる →運動しよう!
って話も混ぜ込んだ。

貸し出しキットの宣伝。博物館に来てくれたら、トラやウマのホネを見せるよ、って宣伝もしておいた。

そこそこリアクションがあったし、笑いも取れたけど、なんかこなれてない感じがあった。あと洗い立てのトラばあちゃんからは、水がいっぱい滴った。


●2016年8月2日 元気なトラ婆ちゃん

トラのホネを洗った。18歳の雌。ネコ科はトラやライオンからイエネコまで、大小を問わず20歳程度が寿命。18歳なら充分長生きで大往生。そうした動物園で長生きしたお年寄りは、歯が悪かったり、ホネが癒合しまくっていたり、ホネ見て分かる問題をいろいろ抱えているもんだけど、トラ婆ちゃんはとても健康そうだった。右上の犬歯周辺が歯槽膿漏で、ホネがえぐれて牙が抜けていたけど、大きな問題はそれだけ。歯はそろってるし、健康そう。あちこちのホネに、若い個体にはない出っ張りがついたりはしているけど、椎骨の癒合もないし、動きに問題なさそう。
死ぬときまで動いて、肉喰ってたんだろうか。こういう健康な個体のホネの方が標本としてはありがたい。自分が死ぬときにも、標本になるならないは別にして、こういうホネを残せるようにありたいと思った。ってことで、歯磨きして運動しなくっちゃ。


●2016年7月31日 2016年7月のまとめ ソウシチョウ調査終了

昨年から継続していた、大阪府内のソウシチョウ調査が完了。山手は一通り調査できたと思う。その麓の調査や丘陵部の林の調査がやや手薄な気もするけど、まあとりあえずはいいかな。
夏の特別展が始まったけど、地学系の展示なのでオープン直前3日間手伝っただけ。久しぶりにとても気楽な7月だった。
4月から抱えている博物館売店のダメダメ問題は、相変わらず解決せず。改善要求をして、改善しない、ってゆうか、そもそも改善する能力がない相手に、いったいどうしたらいいのか途方にくれる。
そんな忙しかった1ヶ月を振り返ってみよう。

ルーティンのため池調査、大和川調査は無事完了。ソウシチョウ調査も無事完了。最後に2日間余裕をもって。大阪のツバメの集団ねぐら巡りにも手を付けた。
すっかり間があいていたカラスの巣チェックも、行事にからめて一度だけ。カラスの枝落とし調査は、エノキの果実付きの枝落としが始まった。エノキは折り口の確認がいるので、ちょっと面倒。
瀬戸内海展に向けての調査は、文献調査足踏みを継続。牛島というところに調査に行く話は、気付いたら立ち消えていた…。

普及行事は、ジュニア自然史クラブと鳥の仮剥製作り。そして、147人参加の奈良公園の月例ハイクと、157人参加のツバメのねぐら観察会と、大型観察会が連発。それぞれ反省点があったりする。
11月の大阪自然史フェスティバルの出展者募集中。協賛や有料出展、寄付の集まりは、目標額の50%弱に到達。あとひとがんばり。

皮剥きは、某動物園からの大物を処理。昨年のクジラのホネの回収も目処が立った。と思っていたら、冷凍室が再びけっこう満杯に近付いてきた。
5月末に某所で勃発した問題は、継続中のはずだけど、流れは中断している。

とまあ忙しい中、
読んだ本は、自然史関係1冊とSF10冊。調査の行き帰りと、帰ってからの時間にかなり読めた。原稿は書いてないし、査読も1本もしていない。講演は1本。
健康面では、先月やってしまった顎がまだ治らない。


●2016年7月30日 ツバメのねぐら観察会あるある

今日は、奈良市平城宮跡でのツバメのねぐら観察会。今年は申込みが多く、参加者は約160名と昨年の倍。受付だけでもてんやわんや。解説するにはマイクのパワーが足らず、マイクを向けながらも、声を張り上げることに…。でもまあ、ここはまずハズレのない場所。参加者を観察ポイントに連れてくれば、たとえ何にも説明しなくても、勝手にツバメが集まってくれるし、それは説明がなくても充分見に来る価値が分かるので気は楽。
だから、説明はしなくてもいいようなもんなんだけど、せっかく来たならいろいろ知って帰って欲しいし、ツバメのねぐら好きを増やすべく、30分ちょっとは解説する。大人はけっこうおとなしく聞いてくれる。ってゆうかツバメが集まって来るまですることはないので、解説を聞いてるしかないんだけど。子どももけっこう聞いてくれてる子もいるんだけど、少なくない子どもたちは虫取りをしてる。こっちは解説してるのに、捕まえたバッタやセミを店に来てくれる。ツバメがいないうちはいいんだけど、ツバメが集まってきてもツバメを見ずに虫取りしてたりする。せっかくやから、ツバメ見よう!と声をかけるが、上を見ずに下ばかり見てる子どもたち。まあ、それで満足して帰るなら、それでもいいんやけど…。

一方で、鳥好きなのか、夏休みの質問にと思っているのか、盛んに質問してくれる子どももいる。
・ツバメの飛ぶ速さはどのくらい? うーん、資料調べなわからん。
・ツバメが飛んでる高さは? 普通は100mもないよ。
・昼間はどこにいるの? 奈良盆地のあちこちに散らばってると思うで。
・このツバメの巣はどこにあるの? それは調べなわからん。でも調べるのは難しい。
・渡る時も群れで行くの? 群れにはなるけど、こんなに大きな群れと違うはず。そして、たぶん固定した群れじゃなくって、リーダーもいない。
・糞は落ちてくる? ときどき糞は落ちてくる。けど、たくさん集まってる割には落ちないね。
・ツバメは一日に何匹の虫を食べる? 虫の大きさにもよるから…。
ツバメがたくさん集まってきてるのに、質問は続く。質問は後で聞くから、今はツバメ見よう!と声をかけるが、やっぱり質問してくる。

とまあ、子どもはあまりツバメを見てくれない。


●2016年7月28日 今年のソウシチョウ調査終了

昨年と今年で大阪府の山のソウシチョウ調査が、おおむね一通り完了した。大阪の公園とか、田んぼとか、ため池とか、河川とかの調査は、今までいろいろやってきたが、山の鳥の調査はあんまりしてこなかった。唯一ミソサザイの調査をしたことがあるんだけど、大阪でミソサザイは金剛山地から和泉山脈の東半分にしかいないので、限られた山しか調査しなかった。今回のソウシチョウ調査は、大阪の山を一通り見てまわる初めての調査。
調査では行ってなくてもそれなりに大阪の山はあちこち行ってるつもりだったが、今回初めて行く山も多かった。そして、やっぱりというか、意外にというか、大阪は狭く、そんなに頑張らなくても、一通りの山を回ることができると思った。生駒山地〜金剛山地〜和泉山脈は、麓を細かく見てまわると時間がかかるが、稜線をぐるっとたどるだけなら(ダイヤモンドトレイルイメージ)、20日でいける(生駒山地6日、金剛山地4日、和泉山脈9日)。北摂山地は山がいっぱいと思っていたけど、これもそれほどではなく10日もあれば一通り回れる。めっちゃ頑張れば、一人で1シーズンでいけるかも。

今回、ソウシチョウとウグイスを中心に記録したけど、同時にキビタキ、クロツグミ、サンコウチョウ、センダイムシクイなど、山で囀る鳥の情報がけっこう集まった。かつてのミソサザイ調査のその後を調べることにもなったはず。
ミソサザイ調査が2004-2005年、今回のソウシチョウ調査が2015-2016年。10年後にまた山の鳥の調査をして、大阪の山の鳥のその後を明らかにしたいところ。

で、ソウシチョウ調査に関しては、来年からは気になる場所のモニタリングになる。生駒山地では星田園地以北のエリアに、これから数年でソウシチョウが増加するのはほぼ確実。和泉山脈にはこの1〜2年でソウシチョウが入り込んだので、その定着プロセスに注目する必要がある。意外にソウシチョウが多くなかった北摂山地は、はたしてこれからソウシチョウが増えるのかが気になる。モニタリングすべきエリアは、けっこう広いなぁ。
何ヶ所か、モニタリングコースを設定して2019年頃まで調査を続ける予定。


●2016年7月27日 もう一つの大阪の田んぼの危機

今日は岬町西部を歩いた。高い山はなく、南北にけっこう長く谷が入っていて、小河川が流れ、集落が点在。けっこう水は豊かで、田んぼがあって、周囲の湿った場所にはカスミサンショウウオやニホンアカガエルがいるという、とても良い場所だった。数年前は。
今日歩いてみると、数年前に歩いた時は耕作されていた田んぼが軒並み放棄されていた。とくに谷奥の棚田風のはどれも放棄されて、草ぼうぼう。今は、よさげな水田雑草でも生えてるかもという期待をもってしまうけど、さらに数年経てば木も生えてきて、林になってしまいそう。
数年前に来た時も、イノシシが増えて困ってるという話を聞かされ、電柵の中に入り込んでるイノシシまで見た。最近はアライグマまで増えてきた。こんなんじゃ田畑はやってられん、というぼやきも聞いた。これは今時、大阪各地、日本各地で聞こえてくること。そして、ぼやいていたのはけっこう年配の方だった。
現在の田んぼは、年配の方に守られている部分が多い。大阪じゃ、稲作は年寄りの趣味、と自嘲気味言われる方もいる。そうした方がいなくなった後、誰が大阪の田んぼを守るんだろう? 稲作を続ける人がいなければ、水田は放棄され、林や草地になっていく。あるいは駐車場や住宅になったり、ソーラーパネルが並んだりするのかもしれない。
食糧自給という問題はさておき、水田に依存して暮らす多くの生き物にとって、とても大きな影響がある。そして、それは着実に進行しているのを実感した一日だった。

もう一つって付けたのは、たんに住宅や駐車場に田んぼが埋め立てられるのとは違い(明らかに関連するけど)、担い手を失って放棄田だらけになるって意味。


●2016年7月25日 公園のカラスの繁殖密度

吹田市の千里南公園にカラスの巣を探しに行った。というのも、この公園でカラスを見ている方から、カラスの巣が3つしか見つからないと聞いたから。南公園と言えば、そこそこ広いのに、そこにカラスの巣が3つだけとはどうしても思えなくて。逆に本当に3つしかないのなら、いつも見ている長居公園と相当様子が違うってことになるから。

で、南公園に到着。おおむね真ん中に池があって、その北や東側にはかつての千里丘陵の里山の名残の林が少々残っていて、あとはマツやユーカリが植えられている。スギなんかも植わっていて、花粉症な人から苦情がでないかと、かってに心配になる。針葉樹が多めで、カラスの巣を見つけるのは面倒な感じがただよう。あと、千里ニュータウンの一角だけあって、公園の周囲の道路沿いにもけっこう立派な木が並んでいる。公園でウロウロしているカラスが、むしろ周辺で営巣している可能性もありそう。
などと思いながら、一周。一応、すべての区画をめぐり、大きめの木は一通り見上げて回った。1時間半ほどかかった。見つけたカラスの巣は、公園内に4つ、公園に隣接する木で2つ。確かに少なめ。ちなみに一周する間に、ハシブトガラスを12羽ほど見かけた。巣の分布と、カラスの分布の印象からすると、南公園になわばりを持ってるカラスは4〜5つがい(池の南西、北西、北、東に1つがいずつ。もしかしたら南東にも1つがい)って感じかなぁ。
ちなみに今年、長居公園にはハシボソガラスとハシブトガラス合わせて25つがい程度がなわばりを持ってると考えている。長居公園の広さは65.7ha、千里南公園の広さは10.5ha。池など林じゃないエリアを考慮しないといけないけど、だいたい面積6倍、つがい数も6倍程度。こんなもんなんじゃないかなぁ。

てな具合に、たった1時間半で一回りしただけで、なんとなく南公園のカラスの生息密度について発言してる。これが充分妥当なら、同じようにあちこちのカラスを調べて回ることも可能な気がしてきた。


●2016年7月24日 研究計画の日から3ヶ月ほど

昨日は、各自が自分で計画して進めてきた鳥の調査の結果や状況を報告する日だった。順調に進んでいる人もいれば、完全に挫折している人もいる。上手く行ってないといっても、その結果は興味深い部分があったりする。

順調な人と言えば、
なんとなくけっこう広範囲を高頻度で行うセキレイ類センサスは、データは蓄積されるだろうけど、それでどうなるかと心配したけど。なんとなく、季節変化だけでも面白そうな結果が出るかもな予感。
公園のネコの数を調べる調査は、楽しげで順調っぽい。個体識別しているので、個体ごとの出席簿を作ってもらおう。
小河川の水鳥センサスは、すでに別の河川で同様の調査をしているので、それとの比較はできそう。そして面白くなるのはこれからのシーズンかと。

順調でない人はと言えば、
公園でカラスの巣を観察企画は、けっこう広い公園なのに巣が2つしか見つからなかったという。本当に少ないのか、見逃しているのか? 巣探しだけでなく、その公園でのカラスの分布をきちんと押さえて、家族群に注目することに。
カイツブリの観察してみようという企画は、思ったようにカイツブリの巣を見つけられないで挫折。カイツブリの巣を見つけるノウハウを身につけてないと難しいらしい。じゃあ、ツバメのねぐらを観察してみようかと。
公園で鳥が襲われた跡を調べるプランは、何を観察したら襲われたかと判断するか、各調査時の努力量の記録(あるいは一定にする)点で失敗していて、取ったデータが使えるか微妙。方法を修正して継続か。
いくつもの公園でカラスの巣を見つけて、巣場所になった樹とそうでない樹を比較するという企画は、樹のパラメータをどうとるか、どう測るか、記録するかで挫折。最初から面倒な企画に手を出しすぎた。
スズメがサクラの花を落とすのの調査は、2つの公園で74本のサクラの下を調べたけど、1本でしか落としてなかったという。ある意味衝撃の結果。年に1週間しか調査できないのがネック。ソメイヨシノを必ずしも落とさない? サクラの品種ごとにどのくらい落とすかを調べるとか?
3ヶ所の違った環境でのセンサスはどんな視点でまとめるか難しい。

期限がある調査ではないので、欲張らず無理せず楽しく続ければいいかなぁ、って思う。


●2016年7月23日 今年の長居公園のカラスの巣

4月にカラス好き少年と知り合いになった。今日、久しぶりに会うので、自慢すべく今年の長居公園のカラスの巣分布図を作ってみた。考えてみれば、2009年からカラスの巣探し8年目なのだけど、一目でその年を総括する分布図を作るのは、これが初めて。全体の様子が分かって、なかなかいい感じ。過去7年分も作ってみなくっちゃ。

2016年のカラスの営巣は終わった(たぶん)。で、今シーズンの繁殖期は、2月終わりから3月には始まっているが、3月中は昨年来の古巣がいくつも消えていっている。逆に4月以降は営巣が一段落するまで、一部を除いて巣は消えていない。そこで、4月1日時点であった巣と、それ以降につくられた巣を集約することとした。

2016年4月以降に長居公園(65.7ha)で記録された巣は、
 合計:57巣。
  内、営巣に使われたのは、29巣。内訳は(一部、周辺で活動している種からの推定を含む)、
   ハシボソガラス12巣
   ハシブトガラス17巣
  これにはやり直しの巣も含まれているので、つがい数にすると(個体識別していないので、観察している時の感覚から同じなわばり内の巣は同じつがいの巣と判断)
   ハシボソガラス10つがい
   ハシブトガラス14つがい

これ以外に営巣を見逃している可能性があるのが、少なくともハシブトガラス1つがい(二次林)。


●2016年7月22日 ポケモンGOで集客?

ポケモンGOなるものが始まった。らしい。と、思ったら、窓の外にスマホを熱心に見ながら行ったり来たりしている高校生の集団。あれってポケモンGOをしてるんじゃ? というわけで、萌蔵が確認に行った。案の定、ポケモンGOだった。
長居公園にはポケモンがバリ見つかる、とのことだった。ミュウツーいたんですよ!というからネットで調べてみると、かなりレアなアイテムらしい。とりあえず博物館周辺では、ポーチにバトルフィールド?ジム?タマゴをもらえる? 知らんけど、なかポイントがあるらしい。きっと館内でもポケモンが見つかるに違いない。
館内でレアなポケモンが見つかれば、それを求めて、ポケモンGOな人たちがやってくる。全然目的外使用だけど、集客につながるのは間違いない。となると、問題はポケモンの居場所は誰がどうやって決めているのか。誰かに頼めばレアなポケモンを配置してもらえるのか? 特別展会場に特別展会期だけポケモンに来て頂くにはどうしたらいいのか? なにやらお金がかかりそうな匂いがするけど。

【追記】
ラブホテル従業員の方が、ラブホの前にポケモンGOの人たちが集まったりしたら、営業上大打撃と書き込んでいた。人が集まって欲しがる施設は数多く、でもそれは無視される可能性もありそう。だが、人が集まると困る施設に対しては、クレームがあればポケストップやジムを設置せず、ポケモン自体も現れない設定は対応するんじゃないだろうか。
だとしたら、金さえ出せば、人が集まるように設定してもらえる可能性も出てくる? それとも公共性を訴えれば、対応してもらえたり?


●2016年7月20日 大阪市内の哺乳類相の変遷

画像を見せてもらった。アライグマが写っていた。場所は大阪市阿倍野区。大阪市内にアライグマが出現しているという噂は聞いていたが、証拠写真は初めて見た。予想はしていても、あらためて見ると驚く。と、驚いていたら天王寺公園でも確認されていると、某動物園関係者の方から教えて頂いた。長居公園でも、菜園でアライグマとおぼしき食痕が、2年前から出ていて、アライグマがいるのかな? と、半信半疑だったが、やっぱり本当にいるんだと考え直しつつあったりする。せめて足跡なりと、見つけて確認したいところだけど。
2000年以降、大阪市内に進出した哺乳類としては、ヌートリアに続いて2種目。

現時点で大阪市内に生息するのが確実な哺乳類は、
 翼手目:アブラコウモリ
 食肉目:ノネコ、アライグマ、チョウセンイタチ
 齧歯目:ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ、ヌートリア
ってところだろうか。他にもしかしたらコウベモグラ?

アブラコウモリ以外は、すべてヒトが持ち込んだ外来生物。いったいどこの島やねん!って感じの種組成だなぁ。


●2016年7月19日 オニバスの生える池、トチカガミの生える池

毎月巡ってる池に今年もオニバスなど水草目立つようになってきた。62ヶ所のため池をめぐって、
 オニバスが生えてた池:3ヶ所(それぞれ、1株、約180株、4株)
 トチカガミが生えてた池:1ヶ所(水面の約5%を覆う)

トチカガミは、3年ほど前から生え始めた。昨年よりも水面を覆う面積は増えている。昨年7月14日時点では、水面の約1%しか覆ってなかった。
トチカガミは突然この池に現れたので、堺市RDBでは人為的移入を疑われて、リストに入れてもらっていない。でも、堺市ではその前にも、北池で数年出ていたし(護岸工事の後、消滅)、さらに前にも小さいしょぼい池に生えていた(埋め立てられて消滅)。周囲に分布域がないのに生えているのは過去の産地も一緒、突然生え始めたのは北池も一緒。

オニバスは、昨年7月14日時点には、1つの池で2株生えていただけだった。そしてその池は消滅。今年生えている池の内2ヶ所では昨年も見たと思うのだけど、もっと後の季節なのかなぁ。今年は生えるのが早めなのかなぁ。
ただ、今年1株だけ生えた池は、その池を20年ほど見てるけど、記憶している限り、初めて生えた。トチカガミ同様、オニバスも思わぬところに突然生えるイメージ。トチカガミと違って、人為的移入は考えにくい。


●2016年7月17日 夏のムササビ観察

今日は、奈良公園で夕方から観察会。袋角をさわって、子ジカを見て、ヒメハルゼミの声を聞く。で、奈良公園に夕方来たんだからと、日没時からはムササビ観察のオプション。
普通、この季節にムササビの観察会はしない。大きな理由は、日没が遅くて、帰るのが遅くなるから。だとばかり思っていたけど、他にもムササビ観察会をこの季節にしない理由があったとは知らなかった。それはセミ。セミって明るい内だけ鳴くのかと思っていたら、けっこう暗くなっても鳴いている。日没後30分ほどして暗くなっても鳴き止まない。ニイニイゼミが延々と鳴く。鳴き止んだかと思っても再び鳴きはじめたり。日没後1時間前後は鳴いてくれる。そして、セミが鳴いている間は、ムササビが見つけられない。というのも、鳴かないのか聞こえないだけか知らないけど、声で探せないから。声のヒントがないとムササビ探しはとても難しい。
で、今日の場合、実質的にムササビ探しの開始時刻は、午後8時過ぎ。すでにとても遅い。多くの参加者は、ちゃんとムササビ探しが始まる前に、断念して帰っていった。とても運がいい数人だけムササビを目にしたらしい。
で、ムササビ観察会は午後8時半までと宣言していたので、実質30分のムササビ探し。チラッと声はしたけど、見つけられない。断念して帰ろうとしたところでムササビ発見。間近に、頭かき、毛づくろい、鳴く所を20分ほど観察。近くにもう一匹が飛んできて、葉っぱを取ったり、飛んで着木を10分ほど観察。今まで何度かムササビ観察に来たけど、こんなにゆっくり観察出来たのは初めて。ただ観察できたのは、、残念ながら最後まで粘ってた10人だけだけど。

10日前の下見の時にはアオバズクやフクロウも鳴いた。もし夏にムササビ観察するなら、6月設定がよさそう。まだセミは鳴いていない。そしてアオバズクやフクロウは期待できる。ホタルも光ってるだろう。


●2016年7月16日 昔の絵の鳥を同定する

大阪市にある某歴史系博物館から、所蔵の博物画コレクションの中の鳥の絵の鳥を同定してほしいという話が来たのは、昨年末。すっかり忘れてたら、先月初め絵のファイルを提供されてしまった。面倒なので放っておいたのだけど、ここ数日あまり調査に出かけてる訳にはいかなくって、それでいてさほど仕事もなかったので、絵の鳥の同定に手を出してみた。
はっきり言ってとっても面倒。考えみれば、自分の研究になるわけでもないし、厳密には自分のところの博物館の展示などの仕事にもつながらない。博物館連携かなんか知らんけど、なんでこんなん引き受けたんやろ。と思ってしまうのも仕方がない。見ろと言われた画像は300枚近く。画が上手なら、鳥の画を見てる自体楽しいのだけど、下手な画が圧倒的多数で、見てても楽しくない。その種名を考えろと言われるのは、どっちかと言えば苦痛と言ってもいいくらい。

日本画ちっくな画はさほど写実には向かない面があるのはやむを得ないけど、できの酷すぎる画が多すぎ。問題点は
 ・鳥のフォルム自体がいがみまくっている。
 ・羽根の生え方を無視。
 ・色がおかしい
いずれも、実物を見ていないのが明らか(でなきゃ単にメッチャ下手ってことになる)。実際、実物ではなく、他の画の模写がかなり含まれている様子。というのも同じような構図・ポーズの画が何セットも見いだせる。片方が少々うまくても、もう一方はめっちゃ下手になっていて、フォルムがいがみ、羽根の詳細がはぶかれ、色がおかしくなっていく様子が見てとれる。伝言ゲームならぬ、模写ゲーム。こうして実物とかけ離れた様式化が行われていくのだろう。様式化された架空としか言えないタカの絵も散見された。というか、鳳凰とか架空の鳥も同列に混じってるし!

画だけでは判断できないけど、添えられたタイトルというか種名で判断できる場合もあった。ただ、これまた古名であったり通称であったりして、現在の種名にはなかなか直結しない。同じ名称が、似たような(と昔の人が思った)複数種に当てられているらしい。というのは、鳥名由来事典みたいな本を紐解くと分かってくる。ただ、こうした本はむしろ画から同定して、この名称はこの種に当てられていたのかぁ。って本なので、あくまでも参考以上にはならない。
ってゆうか、こうした本で、画をもとに種を同定しているのも、本当かなぁ〜、っていうのが少なくない。ってことは、他にもわけのわからん画を見せられて、同定しろと頼まれ、苦労した人がいるんだなぁ、と妙な仲間意識。そして、うかつに間違った同定はしないように、微妙なのは微妙と記そうと、一方で他山の石にさせていただいた。


●2016年7月15日 囀りの季節の終わり

今日もソウシチョウ調査に出かけた。今日は枚方市穂谷から交野山辺り。いないはずのソウシチョウがけっこういて驚いた。というのはさておき、ウグイスやソウシチョウはさえずっていたが、もうキビタキはさえずっていなかった。囀りの季節は終わったらしい。

今日、囀っていた鳥は、ウグイス、ソウシチョウ、メジロ、ホオジロ、ホトトギス。大阪の低山に普通にいて、いつまでも囀っている鳥たち。いつまでもと言っても、8月頃までかなぁ。メジロは11月でも囀っていたりするけど。
大阪の山には他にも囀る鳥はいるけど、他の多くの鳥は、7月中旬頃に囀らなくなってしまう。囀りとは、繁殖のためのなわばり維持やつがい形成・維持の機能があるはずなので、囀らなくなる鳥は、繁殖期が終わったのか、この後なわばりを維持しなくてよくなったのか。ずっと囀る鳥は、まだまだ繁殖期でなわばりを維持しないといけない。といった事情があるんだろう。

ちなみに今日7月15日には、キビタキなどは囀らなくなっていたが、数日前7月11日にはキビタキをはじめ、オオルリもセンダイムシクイも囀っていた。この4日の間に囀りの季節は終わったらしい。もっとも調査している場所は違うので、場所によって囀りの季節が終わるタイミングが少しずれている可能性も否定できない。
そういえば、昨年は、やはり7月11日にはけっこうキビタキが囀っていたようなのだが、7月13日にはほとんど囀らなくなっていた。今年の同じようなタイミングで囀りの季節は終わったらしい。

7月半ば以降ほとんど囀らなくなるというのは、山の鳥だけでなく、ヒバリでもみられる。こちらでも繁殖期の長いセッカはずっと囀っている。
高めの山の鳥では、ミソサザイやクロツグミも7月終わりでも囀っている。
ずっと囀る鳥と、7月半ばに囀らなくなる鳥。何が違うのか気になるところ。そして調査を企画する際には、要注意のポイント。


●2016年7月14日 特別展直前

今年も夏の特別展が、今週末から始まる。はず。明日の午後にはプレビューが控えている。はず。でも、その前日の昼になっても展示は完成していない。完成していないコーナーがあるというどころではなく、半分くらいしかできていない。この時点で完成していないコーナーがあるのは珍しくないけど、それはラベルがまだ並んでないとか、取り付けが済んでないとか、配置の調整がいるとかのレベルが普通。今年の特徴は、そもそも標本が出てきていないこと。なんせ、前日昼の時点で別室で、標本を引っ張り出したり、処理したりしているおが2名もいる! さすがに標本を引っ張り出して並べるところは担当者しかできないので、手伝うのが難しい。
こうして思うと、昨年や一昨年、生物系が中心になった特別展の準備は順調であった。あるいは生物系は気が小さい(たぶん昆虫を除く)。早くから並べて、この時点で最終調整段階に入っていた(昆虫を除く)。地学系のみなさんは、大人物らしく、この展開でも切迫感がただよっていない。今夜は徹夜なんだろう。明日のプレビューの直前まで準備するのかもしれない。間に合うか?というスリルが好きっていうより、展示慣れしていないメンバーが多いので、時間配分が分かってない気がする。

というわけで、14日午後1時点の状況を記録しておこう。
・ウィンドウケース:9スパンの内、7スパンは完成してるっぽい。残る2スパンも少し何かを足すだけか?
・斜面ケース:10台の内、完成しているのは2台のみ。5台はほぼ空のまま。
・平面ケース:23台の内、完成しているっぽいのは11台。4台は空。
・角ケース:9台中4台が完成。
ウィンドウケース1スパンを展示ケース2台に換算して、途中段階のケースの進捗を50%として、進捗率を計算すると68%。ようやく2/3。とはいっても、展示ケース内以外にも、完成に向けてすることはあるんだけど…。
ただまあ2日前には、大物以外、ほとんど並んでなかったから、かなり並んだとは言えるだろう。特別展オープンが来週なら余裕のペース。

────

無情にも時は流れて、いまは14日午後5時。現状を記録しておく。
・ウィンドウケース:9スパンの内、7スパンは完成してるっぽい。午後1時からさほど進んでいない。
・斜面ケース:10台の内、完成しているのは4台のみ。4台はほぼ空のまま。少し進んだ?
・平面ケース:23台の内、完成しているっぽいのは17台。3台は空。ちょっと進んだ。
・角ケース:9台中5台が完成。
というわけで、進捗率は78%。このペースだと完成は8時間後?

────

そして、ついに14日午後9時。現状は、
・ウィンドウケース:9スパンの内、8スパンは完成してるっぽい。残り1ヶ所で作業中。
・斜面ケース:10台の内、7台完成。空のケースは無くなった。
・平面ケース:23台の内、18台完成。空のケースは無くなった。
・角ケース:9台中8台が完成。
ふと気付くと空のケースは無くなった。遅かった昆虫と植物化石がやっと標本を入れてきたからだな。展示ケース内だけの進捗率は94%。でもね、まだ壁に取り付けるパネルとか、ケースの固定とかいろいろ残ってるわけよ。

────

午後11時半。なんと驚いたことに、ほぼすべてのケースが完成している。まだ微調整はありそうだけど、標本はすべて並んだらしい。ってことで標本点数を数えてみた。

現世生物 229点(植物50点、昆虫175点、その他4点)
化石 276点(植物93点、昆虫60点、貝+アンモナイト46点、脊椎動物77点)
その他(岩石、地層、コア) 31点
で、合計536点。地学標本だけだと約300点。

昨年のタマゴとタネ展は1191点、一昨年の都市の自然展は(膨大なセミの抜け殻の山を除いて)2773点。なぜか勝った感が…。


●2016年7月13日 市民参加型の生きもの調査に必要なもの

それは自然史系博物館だ! と、タンポポ調査をはじめとする市民団体による調査をまるで無視して、言い放った。まあ言い放った相手は役人だから。役所が市民参加型の生きもの調査をしたいなら、まずは自然史系博物館という場をつくれ、専門スタッフを確保せよ、という意味だから。そこんところはご容赦頂けるんじゃないかと。

とある役所の方が、現在当館で進めている市民参加型調査のヒアリングに来た。それはいいんだけど、色々とダメダメ。
自分ところで、市民参加型調査を実施しているけど、ほんの数人が、自分の周りの情報をくれるだけで、ぜんぜん広がりがない。また情報の質にも問題があるというのが悩みらしい。それで他所の様子を聞きに来た感じ。
話を聞いた範囲なので、説明に問題があるのかもしれないけど、それじゃあうまく行く訳がなさそうっていう調査だった。何が問題かっていうと。

・情報を集める対象は、何となく役所で決めていて、ターゲットが絞り込まれて折らず、テーマも散漫な感じ。
 →情報提供して面白い結果がでそうなしつらえをしなくっちゃ。

・一方的に情報を受け取るだけで、なんのリアクションもしないらしい。
 →情報提供してもリアクションないとやる気出ないに決まってるし。また提供される情報の質を高めるためにも、個別のコミュニケーションはとても重要。

・集まった情報は、なんとなく集積しているだけ。データの質の問題もあって、まとめもしていない様子。
 →報告会でも、展示でも、ニュースレターでも、ホームページでも、論文でもいいから、成果を見せないとね。とくに集まった情報を随時示すのは、抜けている情報を補完していく上でも重要。

つまり問題点をまとめると、
・専門家の関与がなさ過ぎる。
・情報提供者へのフィードバックがなさ過ぎる。
これでうまく行く訳がない。情報提供者の輪を拡げるのは顧客を増やすのと一緒…、などと聞きかじったドラッカーのような事を言ってみたり。
そもそも、市民参加型の調査というのを、お金や手間や時間といったコストをかけずに、情報が集まる美味しい話と思ってないか? 本当の市民参加型の調査は、普及教育の一環であるボランティア事業と一緒、人を育ててなんぼ。そのためには多大なコストがかかるのを覚悟しなくてはいけない。コストをかける気が無いなら、業者に調査業務を委託した方が、よほどコストは少なくて済むし、情報の質も高い。
言ってはなんだけど、専門的知識がない役人で、市民参加型の調査をしようとする時点で間違っている。市民にとっても、専門家とやり取りをして、勉強にもなるというのが、調査に参加するインセンティブになる。

本気で、市民参加型の調査をする気があるなら、市民向けの窓口となる専門家を雇うところから始めるべき。展示や印刷物、ホームページといった情報発信メディアも持たせやすい自然史系博物館は、とてもいいツールとなる。
で、まずは自然史博物館をつくりなさい。となる。継続的に市民参加型の調査する気なら、小さくていいから、本当につくればいいのにな。


●2016年7月12日 日本で氷期遺存の動物といえば

ライチョウ、ナキウサギ…。ほかに何? 氷期遺存の動物の展示を作れとの急なお達し。で、考えてみるんだけど、そもそも何をもって氷期遺存と言えるのかを考えなければ、どうにもならない。今までそんなことを考えたこともなかったので、けっこう難しい。

じゃあ、氷期遺存の定義は何かな?と岩波生物学辞典を引っ張り出すも、載ってない…。ググってみても、あの何でも適当に説明してくれるWikipediaにも項目がない。仕方がないから勝手に定義を考えてみる。
氷期遺存という名前からして、氷期と間氷期の繰り返しの中で、元はいなかった場所に取り残されてしまった生物。という意味合いなんだろう。
それだけなら理屈上は、南方系の生物が、間氷期(暖かい時代)に高緯度地域に分布を広げて、それが氷期(寒い時代)になって、高緯度地域に取り残された。という場合もあってもよさそうだけど、現実にはそんな話は聞いたことがないから無視しよう。
というわけで、高緯度地域の生物が、氷期に分布を拡大したけど、間氷期になって低緯度地域に取り残されたのが氷期遺存ということになる。北半球で考えるなら、北方系の生物が南の方に飛び地の分布を持っているとあやしい。本来寒い環境が好きな生物が取り残されて生き残れるレフュージアとしては高い山を考えるのが普通。だから標高の高い山地に飛び地的な分布をしている北方系の生物を探せばいい。

ユーラシア大陸の高緯度地域に広く分布し、日本では中部山岳地帯の高山だけに飛び地的に分布するライチョウ。ぴったりの氷期遺存種。同じように、ナキウサギとか、イワナとか、いくつかの高山蝶など昆虫類、さらに植物には該当種がたくさんいる。オコジョもいける気がする。
じゃあ、ライチョウ以外の鳥はというと、高山限定の鳥はけっこう限られる。イワヒバリとホシガラス? 北海道ならギンザンマシコ? イワヒバリやホシガラスは、高山で繁殖する鳥だけど、台湾にもいるし、中国大陸にはけっこう低緯度地域にも分布しているので、分布だけでは判断しにくい。一方、ギンザンマシコはナキウサギにも似た分布。氷期遺存といっても文句は言われなさそう。

などと考えていて思ったけど、本来氷期遺存というためには、現在の分布だけでは不充分。氷期の前に高山とはいえ、分布していなかったという事実が必要なんじゃなかろうか。また、現在生息していない温暖な地域に氷期に生息していたという化石記録も欲しい。でないと、単なる寒冷地に広く分布している種と区別できない。
というわけで、現在の分布だけから氷期遺存なるものを確実に判断するのは、無理だと思う。でもまあ、高緯度地域から飛び地的に、低緯度地域の標高の高い場所に分布していて、それが同じような高標高の場所でも分布している所とそうじゃない所があれば、ある程度はOKな気がする(逆は真じゃないけど)。その意味でも、ライチョウはけっこう胸をはって氷期遺存。ナキウサギとかイワナは怪しくなってくる?


●2016年7月11日 山の道案内

今日はソウシチョウ調査で、島本町の釈迦岳へ。山頂で、見知らぬオジサンに声をかけられた。ポンポン山に行きたいとのこと。尾根筋のハイキングコースを西の方へ向かうだけ。そう説明しても鉄塔のところで分からなくなるの一点張り。手元には、ネットでダウンロードしたと思しきガイドマップ。一応コースパップには見にくいけど等高線も入ってる。しっかり整備したハイキングコースを、それも尾根筋をたどるだけなのに、どこで迷うのかさっぱり分からない。が、話を聞いていて少し分かった。おじさんに言わせると、ポンポン山周辺のハイキングコースは、どっちに行けばいいかという案内が少なすぎて怪しからんのだそうな。分かれ道の要所要所にきっちり案内が出ていて、とても親切なコースだと思いながら登ってきたので驚いた。どうやら、おじさんは一切地図は読めず、コースの所々にあるあっちに行けという矢印と、ネットのガイドマップに書かれている目印だけが頼りらしい。で、鉄塔の下は広くなっていて、どっちに行ったらいいか分からない…。矢印を付けたらなアカンらしい。そんな奴が一人で山に来るなよ〜。
ポンポン山方面に行く予定はないので、とにかくあっち方向に尾根筋をたどれ、と言い放ってその場を離れた。

ここんところ、ハイキングマップと、1/2500地形図を持って、大阪府のあちこちの山に登ってる。多くの人が登るコースはとても整備されていて、迷いようがない。でも、ほとんど誰も登りそうにない山でも、ちゃんと登山道は整備されている。多くは地元の山好きの方々のおかげだろう。階段が作ってあったり、目印のテープが巻いてあったり、迷いそうな所では方角を示してくれていたり。もちろん迷いまくっているのだけど、それでも何とか目的の山に登れて、無事に降りて来れているのは、そうした多くの方々のおかげ。それも恐らく無償で維持してくださっているおかげ。
そう考えると、ハイキングマップの方も、これは購入したものだけど、しばしば細かいところにミスがあったり不満もあるけど、とても役に立っている。ほとんど人が登らない山にいくルートまで大抵はちゃんと書いてある。このマップを作って維持するためには、何度も大阪中の山を歩き回っている人がいるんだろうなぁ。と思うと、800円はとても安く思える。
考えてみれば、地形図しか手元になかったら、もっと迷っていたはず。さっきのおじさんほど酷くはないけど、そんなに山歩きが得意な訳でもない。そんな奴が無事に山に行って帰って来れているのは、見知らぬ色んな人のおかげだなぁ。

などと、考えるとさっきのおじさんにももう少し親切にしてあげればよかった? とか思いながら、地形図を見て、自分の位置と行き先を確認していると、見知らぬおっさんがやってきて、頼んでないのに道を教え始める。道は分かっています。と冷たく答える。
このおっさんが、さっきのおじさんに道を教えてあげればいいのに。


●2016年7月10日 2回目の鳥の仮剥製作製実習

昨年に引き続き鳥の仮剥製づくりの実習を行った。昨年と違うのは、昨年が9月、今年が7月って点だけ。のはずが、なぜか申込者数は、昨年の1/3。季節だけの問題なのか、昨年の参加者からの評判が悪かったのか…? でもまあ、抽選しなくて済むし、当日の対応も楽ちんと、主催者としてはけっこう有り難い。ただ、真の目的のアンケートがあまり集まらないという若干の問題があったりする。
参加者は少ないけれど、スタッフ数は同じで昨年以上に手厚い対応。そして、昨年の経験がある。昨年よりもやりやすい条件がそろっているのに、なぜか微妙にうまくいかなかった。昨年と違うのは、材料がウズラではなくドバトであること。やはりこの差が大きかったらしい。

午前中は、口頭での作り方の解説の後、2人が模範演技。短い昼休みの後、午後から参加者各自にドバトを剥いてもらう。段取りは昨年と同じ。
が、ドバトはやはり難しい。時間がかかる。と現場では思ったのだけど、驚いたことに脂肪取りを除くラップタイムは、昨年のウズラとさほど変わらず(2人ほどかなり遅れる参加者がいた以外は、1人雑に素早く剥いてしまった人がいた以外には)。ただ一通り剥いた後、脂肪取りのおかげで、全員の作業の終了時間は、昨年より2時間余計にかかった。脂肪を充分に取りきれずに、とりあえず時間が来たから終わりにした人もいたので、実際にはもっとかかっていたのだろう。

昨年のウズラでの経験と合わせて、鳥の仮剥製づくりの実習をまとめると。
・とにかくウズラは初心者向き。鳥の仮剥製を普及させるために、あちこちで仮剥製づくりの実習をするなら、とにかくウズラの確保が肝要。一方、ドバトは初心者にはハードルが高すぎ。ただ、脂肪がついてなければ、必ずしも無理ではなさそう。
・一通り見本を見せてもさほど身には付かないので、2〜4人に一人はスタッフが必要。

適当な材料と、充分な人数のスタッフをそろえれば、鳥の仮剥製作りはさほど難しくないってことか。
ホネホネ団で鳥の仮剥製作りを教える場合も、材料を選んで、模範演技後の指導を丁寧にすれば、もっと人がスムーズに育つかも。だけど、ホネホネ団の時は、指導よりも自分で皮を剥きたいからなぁ。


●2016年7月9日 大阪府のトケン類の分布

といっても、大阪府で広く繁殖しているらしいトケンは、ホトトギスとツツドリだけ。カッコウは、一時期は平地から丘陵での繁殖も確認されたが、現時点では繁殖期に安定して記録されているのは、金剛山くらいのもの。金剛山のカッコウは繁殖してそうに思うけど、確認はされていない。ジュウイチにいたっては、ときに金剛山で繁殖期に記録されることもある。って程度らしい。たまたま今年6月に金剛山に行ったらジュウイチが鳴いていた。繁殖期の記録と言いたいが、遅い渡りの可能性もあるので、判断しにくい。

昨年と今年、大阪府内のソウシチョウ調査と称して、大阪府各地の山に出かけている。この際、ついでに他の鳥の囀りを記録しているのは、大阪の山の鳥の生息状況を考える上で、とても参考になる。で、それに基づいて、ホトトギスとツツドリの分布を考えてみよう。
まずホトトギスは、北から南まで、山地に広く生息している。他の調査を合わせて考えると、山の麓や丘陵地の公園でも記録される。7月後半には鳴かなくなるようだけど、それまでの時期であれば、ウグイスの記録個体数と、ホトトギスの記録個体数には相関がありそう。ってゆうか、ウグイスがいない箕面公園にはホトトギスもいない。
ツツドリは、かなり分布が限られている。やたら記録されているのは、和泉葛城山からササ峠にかけての和泉葛城山中央部。あとは岩橋山だけ。寄主になりそうなセンダイムシクイはもっと広く分布しているのに、不思議。


●2016年7月8日 大阪府のソウシチョウの繁殖分布の現状

昨年に引き続き、この繁殖期も大阪府内のソウシチョウの分布調査を実施中。まだ調査は終わっていないのだけど、大ざっぱなところは見えてきた。ということで、現段階で調査結果をざっと見渡した感じ(つまりきっちりとした解析じゃないよって話)をまとめておこう。

昨年の調査で、四條畷市以南の生駒山地、金剛山地、和泉山脈東部(和泉葛城山以東)の状態が明らかになっていた。ソウシチョウの生息密度が高いのは、生駒山地中央部と金剛山周辺。生駒山地の北の方と、和泉山脈東部は、ようやく侵入しはじめたばかりで、記録はされるが生息密度は低かった。北摂はまばらに調査していたが、全体像はよく分からなかった。

今年の調査で、まず和泉山脈西部の様子が分かってきた。和泉葛城山以西には、まだソウシチョウはほとんどいない。一部には侵入しているが、ほとんど囀っていない状態。侵入しても低密度の場合は(?)、囀らないというのは興味深い。和泉山脈西部への侵入は、今年になってからなのかもしれないとも思う。
生駒山地北部では、今まさにソウシチョウが増えつつあるらしい。むろいけ園地では、昨年は2羽しか記録されなかったのに、今年は十数羽も記録された。ほしだ園地でも囀っている個体が1羽記録された。
和泉山脈西部と生駒山地北部は、来年以降もモニタリングの必要がありそう。

よく分からないのは、北摂山地。このエリアには大阪府で唯一シカが生息していて、ササが減少し、生息密度が高い場所ではササが無くなっている。ソウシチョウはその影響を受けているらしく、ササの無い箕面公園やポンポン山ではソウシチョウも記録されていない。他の場所でもソウシチョウの生息密度は低めで、箕面市、茨木市、高槻市ではほとんど記録されなかった。豊能町北部・西部、能勢町東部・南部では、低密度ながらも生息。能勢町北部・西部、池田市ではけっこう高密度で生息といった感じ。けっこう高密度と言っても、生駒山地中部や金剛山周辺と比べると全然密度は低い。密度の低さはウグイスにも当てはまる。

というわけで、まともな解析なしに暫定的に結論づけるならば、
・生駒山地や和泉山脈では、ソウシチョウの分布拡大は今も続いている。
・最初に定着した北摂山地は、ソウシチョウの分布はまばら。
・シカの影響は少なからずありそう。
といったところだろうか。


●2016年7月7日 シカとヒメハルゼミとムササビ

来週末の観察会の下見に奈良公園に行った。観察会のタイトルには、「仔ジカ観察」とある。あおり文には、「袋角」「ヒメハルゼミ」「ムササビ」の文字が躍る。この辺りと出会えるかを確認するのが、下見の主な目的。
夕涼みを兼ねて、午後4時から。という設定なのだけど、午後4時の奈良駅前は十二分に暑い。集合はもう1時間送らせればよかった…。

と、ぼやきつつ、とりあえず興福寺へ。工事中エリアをグルッと回っていくと、暑そうにした雄ジカの集団に出会う。暑いせいか、簡単に袋角に触れる。血が通っていて暖かい。そして毛が生えていてフワフワ。シラミバエも歩いてる。見ると、妙な形の変形型の角の個体もいる。人の少ない辺りまで行くと、今年生まれの仔ジカを発見。これは可愛い。お地蔵さんに湯飲みなどに入れて備えてある水を盛んに飲んでいるシカもいた。
猿沢池をグルッと回ってから、一の鳥居へ。猿沢池はカメで有名だけど、アカミミガメが少ないのには驚いた。ざっと数えてクサガメ18匹にアカミミガメ3匹。一の鳥居から荒池の方へ。小さい池の中にサカマキガイ。子どもらが水遊びをしていて、スジエビとヨシノボリ類をいっぱい採っていた。説明する鳥がいないので、本番ではカメと貝とエビを担当することになりそう。水網を持ってこよう。
飛火野の芝生に65匹ほどの雌と仔と若い雄のシカの群れ。近寄るとさりげなく逃げていき、触れない。芝生を横切っていき、林に入った辺りでヒメハルゼミの合唱が聞こえてきた。一斉に鳴いて、ピタッと鳴き止むのがヒメハルゼミの売りだけど、なんとなくダラダラと泣き続けて不満。小さい池にはモリアオガエルの卵塊のなれの果てが3つほど。その下の水は涸れかけていて、わずかに残った水にオタマジャクシが集まっていた。
志賀直哉旧邸から春日山入口まで行ってから、春日大社の方に戻る。ゆっくり歩いてきたので、この辺りで日没。少し急ぎ足でまっすぐ東大寺へ向かう。ちなみにヒメハルゼミは、東大寺前の交差点の辺りでも鳴いていた。どこにでもいるなぁ。

東大寺に到着したのは日没後約20分。手分けしてムササビを探す。と言っても、日没後35分過ぎまでニイニイゼミが鳴いていてうるさい。静かになってきたと思ったら、ムササビが鳴いた。アオバズクも鳴いてる。遠くでフクロウの声もする。真上の木にアオバズクがとまって鳴いてくれて、姿が見れた。その代わり他の人たちが見たキツネは見逃した。最後にようやくムササビに出会えた。鳴き声がした木の辺りにいるのを偶然見つけた。少し小さい気がするのは若い個体だからだろうか?
とりあえず、案内したものは見られそう。10日後にどうなってるかは知らんけど。


●2016年7月5日 久々の藪こぎ

今日は南葛城山に登った。この辺りにはシカはいない。山頂は一面のササ原だった。

南葛城山に登るのは2回目。前回は、東の五ツ辻から尾根伝いに登った。というか既に登った後状態なので楽なもんだった。今日は、北側の千石谷から一気に登るコースを選んでみた。けっこう後悔した。林道から川を強引に渡って、急な登り道に突入する。一気に約450mほどを登る。登りっぱなしで1時間かかった。
で、山頂部の平らな部分に着いた。と思ったら、目の前は手入れが行き届いた感じの明るい植林で、林床はササで覆われていた。登り道は踏み跡と、小まめに木に巻かれたビニールテープをたどってきたのだが、踏み跡はササ原に消えて行っている。向こうの方の木にテープも付いてる。というわけで、このササ原に突入して藪こぎをしろということらしい。

近頃、日本各地の山でシカが増えている。林床の植物はどんどん喰われて、シカが喰わない植物ばかりが残っている。シカ密度が高まると、ササも食べられて、ササがまったく姿を消しているところもある。ササが残っていても、一部喰われたり、踏み跡を付けられたりして、幸か不幸か藪こぎとはすっかりご無沙汰となっている。
が、しかし大阪府南部にシカはいない。随分久しぶりの藪こぎ。ササの高さは、150-200cm程度。辛うじて前が見えたり見えなかったり。足下はもちろん見えないから、探りながら歩いて行く。道は確かにあって、足下は問題なく歩ける。その道沿いのササは幾分低くなっているので、道が曲がってもたどっていける。ただ、密生している場所では、体をひねったりしつつ、ほとんど平泳ぎ状態。夜露でササは微妙に濡れていて、シャツもズボンもビショビショ。
分かれ道間違えたりしてないかなぁ? ササ原の中でけっこう不安になってきた頃、しっかりした登山道に出た。約300mの藪こぎだった。シカが増えて林床の環境が改変されまくるのは、生物多様性的に問題だけど、ササ原がなくなって藪こぎしなくてよくなるのは、山歩き的にはありがたいなぁ、と実感した。

南葛城山は、大阪府で2番目に高い山。一番高い山の金剛山は、山頂は奈良県にあるので(大阪府側でも充分大阪府で一番高いけど)、山頂だけで比べれば南葛城山が一番。なのに、山頂に三角点がないのが不満。そういえば前回来た時も不満に思ったっけ。
南葛城山の山頂も、植林とササ原。自然林だったらブナが生えてたりしてたんじゃなかろうか。自然林残しておいてくれたらよかったのに。そこもけっこう不満。


●2016年7月4日 ミズオオバコの池

久しぶりに山下駅からバスに乗って、能勢町西部へ行った。山の上のソウシチョウ調査なんだけど、せっかくなので降りてきたら道の駅へ。…そういえば、この道の駅の近くにミズオオバコがいっぱい生えてるとても感じのいい小さな池があったっけ。ってことで、調査が終わってから少し寄り道してみることにした。
かつてと比べると、能勢町の水田周りは随分と様変わりした。シカが増えたので、軒並み柵で囲まれている。かつては気軽にカエル取りができたのに、いまはカエル取りの一苦労。柵の中に逃げ込まれると取れない。となると、田んぼの小さな生き物はもしかしたら、捕食者から逃げやすくなって、増えたりしてるんだろうか?
などとお目当ての場所に到着。??ここだと思うんだけど、ここだっけかなぁ? 何度も周りを見渡すと、やっぱりここみたい。ミズオオバコの池は周囲をすっかり刈り払われて、水も少なくなって、ミズオオバコは影も形もなかった。それどころか、周囲の草はすべて刈られて明るい何にも無い池の名残りでしかなかった。
その池の名残も柵で覆われていた。柵を設置するときに周囲を刈ったような感じかと。シカの影響はこんなところにも出てしまうのか…。


●2016年7月3日 ザトウクジラのホネの回収

ってゆうか、最初に回収したのは、昨年9月に岬町にて。肉を虫や微生物に処理してもらうために、ホネ用の砂場というのがあって、そこにセットすること、もうすぐ10ヶ月。そろそろ、砂場からの回収のタイミングかな?と、5月頃から考えていたが、その砂場から今日ついに回収してみた。
ホネ作りは回収のタイミングがとても大切。早すぎたら、まだ肉や筋がいっぱい残っていて、回収してからさらに水漬けとか面倒くさい。脂肪が充分抜けていなかったら、これまたさらに水漬けでもしないと、保存していると油がホネににじんでくる。かといって、長く放置しすぎると、ホネが痛んでしまう。
頻繁にチェックして頃合いをはかればいいんだけど、そんなに暇じゃ無い。ってゆうか、一年近くも放置していると、すっかり忘れてしまったりする。そもそも埋めたホネはチェックも簡単じゃないし、ある部分がちょうど頃合いでも、他の部分はまだ早かったり、部分による違いもある。だもんで、とくに大切なホネは、かなり気を遣う。

そこそこ肉を取り除いて砂場にセットしたものは、おおむね一夏超えると、頃合いのホネになっているのが普通。でも特大のクジラは、どこまで当てはまるのやら…。正直に言えば、大きなクジラを自分の責任でホネにするのは初めてだったりする。充分に肉を取り除けてない部分もあるし、暖かくなってきた頃から、いつ回収するか悩んでいた。とくに頭骨は壊れやすいパーツが多いので、ベストなタイミングに回収したい。
9月にセットしたので、夏は超えていない。春に回収するのはまだ早いだろう。5月は我慢して、6月に回収するつもりだったのだけど、予定日が雨だったので断念。7月頭に持ち越した。

一口に砂場から回収と言っても、タイミング以外に気を遣うことも多い。とくに頭骨は、小さいパーツははずれて落ちてる可能性がある。大きすぎて包めていないので、周囲をそぉーっと掘って、外れたパーツの確認が必要。頭骨は、砂場の上に置いて、軽く砂をかけてあったので、周囲の砂を取り除いて、下面の様子をうかがう。だいたいホネになっている様子。と確認して、最終的に今日の回収を決断した。
頭骨はとくに先端部が壊れやすいし、はずれるホネもあるので、ホネを直接持つよりは、何か板にでも載せたい。頃合いの材木を組んだ担架のような物があったので、勝手に拝借して、頭骨の横に並べる。で、一人では持てないので助っ人を呼ぶ。重さ的には2人で持ち上がるが、念のため4人で運ぶ。
砂の上から担架の上に移す。その時、上嘴沿いに最後まで付いていた肉がとれて、晴れて肉無しの頭骨になった。安定する位置をさがして、材木片で安定させて、できるだけ砂を腹って、移動開始。途中、担架の一部が折れるというアクシデントがあったが、無事に屋根のある半屋外のトラックヤードに運べた。そこで水をかけてざっと洗って、あとは乾かす。

他に下顎、肩胛骨、腰椎、上腕骨+橈骨・尺骨も回収した。いずれも砂の上に置いてあったもの。埋めてないので早くホネになるし、紫外線の影響もあるだろうから、一足早く回収。いずれも綺麗にホネになっていた。水に浸けると驚くほど水を吸い込み、上げるとホネの中からザーーーーと水が出てくる。時間をかけてしっかり乾燥させる必要がありそう。
残る椎骨や手先は、8月に回収予定。これは砂に埋めているので、時間がかかるはず。回収までに軽く掘り出して、様子を見ておきたい。とくに尾椎はなかなか綺麗なホネになるのに時間がかかるから。手先の回収には、位置が分からなくならないように、慎重な作業とホネの地図作りが必要。これは押しつけよう〜。


●2016年7月2日 ペリカンとカワウ

今日は、ペリカンの皮剥きをしていた。ほぼ手伝わずに側で見てるだけだったけど、ペリカンはとてもカワウに似てるなぁ。などと思いながら。

気付いた範囲で似てるのは、
・嘴周辺:真っ直ぐに長めで、上嘴の先端が下に曲がった形。鼻孔がどちらもないこと。下嘴の間から喉の皮がよく伸びる。舌がとても小さい。
・目の辺り:頭骨のサイズに比べて、眼球が小さい。目の上に塩腺がない(カワウは眼窩の中にあるそうなので、ペリカンもそう?)。
・羽根:首辺りの羽根が細かくてベルベットの手触り〜。
・脚:全ぼく足というはず。4本の指がすべて前を向いて、その間すべてに水かきがある。

とまあ、よく似てるのに
・カワウに限らずウ類は頭骨の後ろに、三角の骨があるのに、ペリカンにはない。
・少なくともモモイロペロカンは、初列雨覆にピンクの羽根と黒い羽根が混じっていて、そのパターンはデタラメらしく、左右の翼で違う。カワウにそんな左右非対称はなさそう。

とまあ違いはあるものの、むしろ類似点の方が多いのに、その分類は、
・日本鳥類目録 改訂第6版では、ペリカン目ペリカン科とペリカン目ウ科
だったのに
・日本鳥類目録 改訂第7版では、カツオドリ目ウ科とペリカン目ペリカン科
納得ができん。ペリカンは、サギやトキより、ウに似てる!


●2016年7月1日 トゲヂシャ分布調査

今日は福島区で用事があった。用事が終わってから、なんとなく西区の方へ、2駅分歩いて帰ってきた。アメリカオニアザミを探していたのだけど見つからず。トゲヂシャばかりがたくさん生えていた。
昨年、外来生物調査プロジェクトが始まって、アメリカオニアザミを探せという指令が出て、街中のとくに道路脇などに生えている雑草を注意して観察するようになった。アメリカオニアザミ以外にも気になる植物がけっこうある。たぶんどれも外来植物なんだろうなぁ。と思いつつ、種名が分からない。
その中でも一番気になっていたのがトゲヂシャ。妙に背が高くなって、地味な花を付けるだけなのだけど、何より葉っぱが変な付き方をしてる。空に向かって平たく拡がっているんじゃなくって、縦になってる。それじゃあ光合成の効率悪くないのかな?と心配になるくらい。ともかく粗いギザギザの葉っぱが縦になってる、こんな特徴の植物は他に見あたらない。知らんけど。少なくとも街中では見あたらない。
昨年もつくしんに訊ねて、名前を教えてもらった気がする。でも、忘れてしまって、今年再び草地屋に教えてもらった。今度こそ忘れないぞ!

で、アメリカオニアザミを探しがてら、トゲヂシャの分布も気にしてみてる。トゲヂシャが生える場所は、アメリカオニアザミよく似てる気がする。他の植物があまり生えていない道ばた。すきまの植物として見かけることが多い。
でも、トゲヂシャの方が、アメリカオニアザミよりもはあちこちで見かける。街中でもトゲヂシャに出会うことが多いのみならず、郊外によく進出しているのもトゲヂシャの方の気がする。
とまあ、すでにあまりに普通種なのでトゲヂシャの分布調査はしてもらえそうにないな。見分けやすい植物なので、もっと広い範囲で、日本にどれほど広まってるかを調べたらいいかも。


和田の鳥小屋のTOPに戻る